羽生結弦さんは7月5日、改修工事を終えた仙台市アリーナ(ゼビオアリーナ仙台)の開館記念イベントアイスショー「The First Skate」に登場。未来を担う子どもたちに向けてエールを送った(写真は2022年の公開練習のときのもの、写真:西村尚己/アフロスポーツ)
(田中 充:尚美学園大学スポーツマネジメント学部准教授)
7月5日、日本におけるフィギュアスケート発祥の地とされる仙台で、改修工事を終えた仙台市アリーナ(ゼビオアリーナ仙台)に新たに通年型の常設リンクがお目見えした。真新しいリンクで行われた開館記念イベントのアイスショー「The First Skate」では、仙台ゆかりのスケーターたちが、地元で研鑽を積む次代のスケーターたちとともに華麗な演技を披露した。主役を担ったのは、五輪2連覇を成し遂げたプロスケーター、羽生結弦さんだった。
「ようこそ、未来を紡ぐ新しい舞台へ」
会場の大型ビジョンに歓迎の言葉が映し出された。
ショーの幕開けが告げられ、アリーナはたちまち大きな拍手で包まれた。
開館記念イベントのアイスショー「The First Skate」では、仙台ゆかりのスケーターたちが華麗な演技を披露した(写真は筆者)
会場内のアナウンスでは、仙台が日本のフィギュアスケート発祥の地とされていることが紹介された。仙台の都心部に隣接する青葉山公園内にある「五色沼」こそが、その場所だ。そんな杜の都・仙台は、やがて2人の五輪金メダリストを生み出した。
2006年トリノ五輪女子金メダルの荒川静香さん、そして、この日のショーを盛り上げた2014年ソチ、2018年平昌の五輪男子で2連覇した羽生結弦さんだ。
ショーにはほかにも、五輪2大会出場の本田武史さんと鈴木明子さん、世界選手権代表経験のある本郷理華さんも出演した。
だが、仙台も常に恵まれた競技環境下にあったわけではない。本郷さんと鈴木さんはかつて、練習拠点のリンクが閉鎖された経験があったことをこの日のショーを終えた後の囲み取材で振り返った。
リンクの閉鎖を振り返る選手たち
本郷さんは「仙台でスケートを始め、先輩たちの姿を追いかけようと頑張って練習をしようと思ってやってきたんですけど、やっぱり一度リンクがなくなってしまって、それで名古屋に練習拠点を移しました」と語った。
鈴木さんも「私も仙台でリンクが一度閉鎖されてしまって、(本郷さんは)署名活動をしてきた仲間でもあります。選手たちにとっては、リンクがないと、練習にもならなくて、続けることができない」と打ち明けた。
仙台市内にあるリンクは現在、羽生さんが巣立った民営のアイスリンク仙台のみで、競技環境のさらなる充実に向けた新たなリンクの誕生は、地元スケート界の長年の悲願でもあった。
仙台にゆかりのある選手たちの悲願でもあると思うと、新しいリンクの完成は一層、感慨深いものになる(写真は筆者)