お城のような屋敷の重厚な木製の扉が開いて、そこから出てきた猫は、塀の上に飛び乗りました。扉を開けていた奥さんに話を聞きました。「家の中の庭もかなり広いのだけれど、猫は、高低差のあるところが好きだから、家の庭では満足しなくて、この塀の上に乗るのが好きなのよ」。

 猫の名前はジョゼフィーヌ。この家では、先祖代々猫を飼っていて、オスはナポレオン、メスはジョゼフィーヌ(ナポレオンの妻の名)と決められているのだそうです。「だって、猫は家の皇帝だもの。先祖が決めたルールに異存はないわ」。

 なだらかな三角錐のような地形の古くからある小さな村を訪ねました。村の入り口(麓)に駐車場があり、そこからは道が狭く車は進めません。気が向いたときだけお客さんの相手をするというカフェの猫が現れて、ラッキーでした。

 小高い丘の上の教会を囲むように螺旋状に家々が広がっている村です。教会から四方を見渡すと、ぐるりと赤い屋根が幾重にも見えます。猫が「お邪魔しますよ」といった足取りで、目の前を横切っていきました。