米マイクロソフトによる、スカイプ・テクノロジーズ(Skype)の買収が正式発表された。買収金額は先の報道の通り総額85億ドル。既にマイクロソフトとスカイプの取締役会が承認しており、両社は正式契約を結んだ。今後、規制当局の承認などを経て年末までに買収手続きを終わらせる見込みだ。
買収後はスティーブ・バルマー最高経営責任者(CEO)直属の事業部門「マイクロソフト・スカイプ部門」を設置し、スカイプの現CEO、トニー・ベイツ氏が同部門の社長職に就く。
スカイプのインターネット通信技術を使って、電子メールやテレビ会議などのサービスを充実させ、家庭用ゲーム機「エックスボックス(Xbox)」やスマートフォン向け基本ソフト(OS)「ウィンドウズフォン(Windows Phone)」などとの連携も図りたい考えだ。
イーベイ、結果的に14億ドル儲ける
ただ、この買収、さっそく波紋が広がっている。果たしてスカイプが85億ドルの価値を持つ企業なのかと疑問の声が上がっている。
ネットオークションの米イーベイ(eBay)が2005年にスカイプを買収した際に支払った金額は26億ドル。イーベイは2年後に約5億ドルを追加で支払っており、スカイプ買収にかかった合計額は約31億ドルだった。
その後イーベイはスカイプ株の70%を米シルバーレークパートナーズを中心とした投資グループやスカイプの創業者に譲渡したが、その時の取引規模は総額27億5000万ドル。つまり今回のマイクロソフトによる買収額はその3倍以上ということになる。
米ウォールストリート・ジャーナルは、「イーベイはスカイプを買収したことで大損をしたが、今回の取引で結果的に14億ドル儲けることができた」と報じている。
ベテラン経営者の起用で業績改善
一方で米ニューヨーク・タイムズは、マイクロソフトのバルマーCEOがこれほどまでの高値でもスカイプを手に入れたかったのには理由があると報じている。スカイプでは投資グループが大株主になった2009年から事業改革が始まり、今では改善が見られているからだ。
スカイプはこの2年間、サービス開発に専念し、製品サイクルも早めた。成長が見込める携帯電話、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)の分野にも力を入れ、通信事業者との連携も強化した。