米国の刑務所の死刑執行室(写真:AP/アフロ)

 アムネスティ・インターナショナルのデータによると、死刑を実質的に廃止している国は142カ国で、死刑制度をまだ保持している国は発展途上国や独裁主義国家を中心とする56カ国ある。死刑制度を保持している国の中には、先進的な民主主義国家が2つあり、これがアメリカと日本である。

 なぜ日本には死刑制度が残っているのか、海外の死刑や死刑廃止をめぐる実情とはどのようなものなのか。『死刑のある国で生きる』(新潮社)を上梓したジャーナリスト、宮下洋一氏に聞いた。(聞き手:長野光、ビデオジャーナリスト)

──日本弁護士連合会の死刑の廃止を求める声明文に関して、動機や説明が不十分である、といった印象をご著書の中で宮下さんが持たれたように見受けました。

宮下洋一氏(以下、宮下):日弁連は死刑の廃止を求めています。この主張は2016年の日弁連の人権擁護大会で決まり宣言されました。先進的な民主主義国家は死刑制度を廃止し、まだ死刑を続けている国はアメリカと日本だけで、だから日本も死刑を廃止しなければならない、というのがその理由です。

 この主張は「死刑廃止が世界の潮流だから日本もやめよう」というもので、日本人にとって死刑を廃止する意義が何なのかをあまり語っているように思えません。

──日本に死刑制度が残っているのは、日本が遅れているからなのでしょうか。それとも、日本独自の事情や考えがあり、死刑制度を意図的に残しているのでしょうか。