朝鮮半島を南北に分ける38度線。北朝鮮の脅威は高まっているが、北朝鮮の利益を代弁する左派の声は大きい(写真:ロイター/アフロ)

(朴 車運:韓国ジャーナリスト)

 ロシアのウクライナ侵攻については、全世界が憤りを覚えている。欧州をはじめとするいくつかの国家では、義勇兵がウクライナに赴いている。日本と韓国からも、少数の義勇兵がウクライナを助けるために旅立った。

 ウクライナの状況を見ると、過去に韓国が置かれた状況が思い出される。旧ソ連と中国が支援した北朝鮮と韓国の間で起きた朝鮮戦争である。

 もちろん筆者は、朝鮮戦争を直接経験したことはないが、朝鮮戦争以降、北朝鮮の挑発は韓国社会に多くの影響を及ぼした。

 朝鮮戦争を契機に誕生した服務義務(徴兵義務)と体系的な組織を備えた予備軍(予備役)、民防衛委(民間防衛隊)は、現在も維持されている。今の兵役制度は比較的緩和されているが、筆者が幼かった頃は、兵役の他に、学校での軍事訓練が正式な教科として存在した。

 日本の方には理解できないかもしれないが、韓国の状況は極めて特殊だ。

 1945年の独立以降、韓国の情勢は常に不安定で、長期間にわたる軍事独裁統治を経て、21世紀には西洋の民主主義国家と似た構造を備えた。1960年代から1990年代中盤までの軍事独裁時代にも、韓国は民主主義国家だと言われていたが、実際は抑圧だらけであり、向かい合う北朝鮮に対して、常に備えている必要があった。

 ご存知のとおり、韓国には兵役義務がある。正常な男性ならば、1年6カ月の軍隊生活を送る。除隊後も8年間、予備軍として軍部隊の1年に一度の軍事訓練を履修し、その後。40歳までは地域の民防衛委に所属する。40歳以降は地域防衛隊に属し、戦争が勃発した場合は地域の警備任務を遂行する民防衛委に所属しなければならない。10年と言われる北朝鮮の服務義務期間よりはマシだが、韓国の男性の兵役もそれなりに長い。