スコットランド・エディンバラに本拠地を置くベイリー・ギフォード社は、「長期投資」を軸とした投資哲学と独自の運用プロセスで長期的な運用成果に定評を有する運用会社だ。その“神髄”をひと言でいうと「成長株への長期投資」となる。これを可能にする特徴や仕組みとは何か? 現地で同社のクライアント・サービス・ディレクターを務める小宮健一氏のインタビューも交えてひも解く。
1908年の創業以来、アクティブ運用一筋
ベイリー・ギフォード社(以下、BG)は、英国・スコットランドの首都、エディンバラに本拠地を置き、1908年の創業以来、100年以上にわたって「成長株への長期投資」を実践し続けてきた、アクティブ運用一筋の運用会社だ。
主な顧客層は長期的な視点を重視する世界中の大手年金基金であり、日本では、MUFGグループがBGと長期の関係を築いており、三菱UFJ信託銀行を通じ年金顧客向けにサービスを提供している。また、三菱UFJ国際投信がBGの旗艦戦略を活用した個人投資家向け商品を2019年の2本を皮切りに複数本設定している。
2019年に設定されたファンドのうち、1つは「ベイリー・ギフォード世界長期成長株ファンド<愛称:ロイヤル・マイル>」(※商品詳細は後述)、もう1つは「ベイリー・ギフォード インパクト投資ファンド<愛称:ポジティブ・チェンジ>」(※第1回でご紹介)である。
「成長株への長期投資」を体現する銘柄選定は、決して特別なことをしているわけではないという。「『株価は長期的には企業利益にしたがって動く』というオーソドックスな考え方のもと、長期的に高い利益成長が見込まれる銘柄を選び抜き、5年以上の長期にわたり辛抱強く持ち続けます」。BGのクライアント・サービス・ディレクター小宮健一氏はこう話す。
競争力の源泉である「独自の情報源」とは
銘柄選定の考え方こそオーソドックスかもしれないが、そのベースとなる「独自の情報源」については非常にユニークなものがあり、BGの競争力の源泉となっている。
「大西洋をはさんだ両端、すなわちニューヨークとロンドンの金融市場から発信される情報はあまり活用していません。いわゆるセルサイドの情報は短期的な視点のものが多く、世界で起こっている構造的な変革をとらえることは難しいと考えているからです」(小宮氏)。
“ノイズ(余計で無意味な情報)”に惑わされることなく、経済や企業の実体をとらえるために、BGは一次情報を重要視している。長期で辛抱強く投資を続けるスタンスから、BGに対しては、企業の経営陣から株主になってほしいとの声も多いとのこと。その結果、優れた経営陣、創業者との太いパイプラインを持ち、直接の意見交換を通じて貴重な情報を得ている。
ここ5年ぐらいは、先端の研究を行っている大学の研究室などに助成を行い、教授や研究者などから話を聞かせてもらうことも貴重な情報源になっていると言う。また、学術界との提携に加え、書物・出版物からヒントを得ることも多い。BGのファンドマネジャー、アナリストには「読書好き」が多いこともあり、英国・スコットランドの各地で開催される、ブックフェスティバルのスポンサーになり、本の著者から直接情報を得ることもある。
「日本だけでなく世界でも大ベストセラーになった『ファクトフルネス』(データや事実に基づき、世界を読み解く習慣やスキル等について記載の著書)の著者、ハンス・ロスリング氏をBG主催のカンファレンスに招へいし、講演してもらったこともあります。彼の話は、われわれのバイアスを修正するのに大いに役立ちました」と小宮氏は話す。