(山根一眞:ノンフィクション作家)
2021年8月11日から、九州や中国地方を中心に日本列島の広い範囲で大雨が長く続いた。1日の降水量が8月の観測史上最大を記録した地点もあった。だが、「観測史上最大の雨」「100年に1度の大雨」などの言葉を耳にすることがあまりにも多くなったため、「恐怖の大雨」を経験した地域外の人たちは記憶にも残っていないかもしれない。だが、ぜひ考えておかなければならないことがあるのだ。
8月の大雨の最中、広島市安佐南区在住の私の知人、Aさんは、自宅に近い太田川の洪水の不安の中で、自宅から4km北、八木地区の土砂災害を心配していた。
2014年8月20日に発生した広島市豪雨土砂災害による土砂崩れでは、安佐北区と安佐南区の7つの地区で74人の命が失われたが、その7割にあたる52人が亡くなったのが八木地区だったからだ。
九州北部から広島を中心に降った凄まじい大雨
先月の記録的大雨を気象庁はこう報告した。
<8月11日から19日にかけて、日本付近に停滞している前線に向かって暖かく湿った空気が流れ込み、前線の活動が活発となった影響で、西日本から東日本の広い範囲で大雨となり、総降水量が多いところで1200ミリを超える記録的な大雨となった。>