重厚長大産業の復活。先の「戦後最長」景気拡大局面では、これが1つのキーワードになった。その代表格は鉄鋼産業。中国をはじめ新興国の旺盛な需要に支えられ、忘れていた勢いを取り戻した。そして今再び、重厚長大産業は苦境に陥っている。
昨秋、新日本製鉄は自動車向けなどの急激な需要減退を受け、3年ぶりの減産を決めた。2008年度上半期の設備フル稼働から一転。下半期の減産規模は当初100万トン程度から、11月末に200万トン強、1月末の発表では420万トンに膨らむ見通しに。その足跡は深刻度の加速する生産現場の窮状を端的に示している。
JFEスチールの減産規模もほぼ同じ400万トン。これに神戸製鋼所、住友金属工業などを合わせたオールジャパンでは、1000万トンを上回るという。1000万トンと言えば、国内の年間粗鋼生産の1割程度に相当する膨大な量。日本国内で予定されていた1カ月分超の生産量が、消えてしまう計算になる。
「最終手段」だが・・・相次ぐ高炉休止
年明け以降、新日鉄とJFEの国内2強は減産の一環として、高炉休止に相次いで踏み切った。一度休止すると、「再開するまでに少なくとも1カ月以上は掛かる」高炉休止は、鉄鋼メーカーにとって減産の「最終手段」。今後のことを考えるなら、なるべく使いたくないのだが・・・。
上半期の好調を考えれば、今年度中に計4基もの高炉が止められる異常事態を誰が予想しただろうか。高水準の生産により好業績が続いた頃の勢いが、鉄鋼業界から消えた。
戦後の高度経済成長を支え、産業界の雄として君臨した鉄鋼業界。だが、1973年の第1次石油危機以降、産業構造の転換に伴う国内需要の減少などにより、大幅な減産を迫られ、設備の廃棄さえ余儀なくされる。いわゆる「鉄冷え」の時代が長らく続いた。
事業の選択と集中、大胆なリストラ・・・。苦闘が報われ始めたのは、2000年を少し過ぎたあたりから。低迷時代の長さと比べれば、つい最近のことだ。以後、高水準の生産と好業績が当たり前に。海外の鉄鋼需要は台頭する中国がリードする形で、爆発的に増加していく。国内需要がマイナス方向に転じたとしても、それを補って余りあるほどの外需が、中国をはじめ新興国にあふれていた。
その結果が、2007年度の記録的な粗鋼生産量である。前年度比3.2%増の1億2151万トンとなり、過去最高の1973年度(1億2002万トン)を34年ぶりに上回った。しかし、こうした「上げ潮ムード」も2008年秋口まで。世界同時不況の影響が如実に表れ、10月以降は再びマイナス基調に陥り、月を追うごとに減少幅が大きくなっている。
各社の減産基調を反映し、今年1月の粗鋼生産量は前年同月比37.8%減の 637万トンに落ち込んだ。数量としては。1969年2月の 577万3000トン以来40年ぶりの低水準。下落率では、記録の残る1949年1月以降で最大の昨年12月(27.9%減)をさらに上回り、2カ月連続で過去最悪を更新した。厳しい流れは当面変わりそうにない。