(加谷 珪一:経済評論家)
経済産業省の職員が、同省の新型コロナ関連給付金制度を悪用し、公金を騙し取った疑いで逮捕された。残念なことに経済犯罪というのは一定確率で発生するものだが、コロナ危機で多くの国民が苦しみにあえぐ中、中央官庁のキャリア職員が、みずからの組織が提供する給付金で詐欺を働いたことに衝撃を受けた人も多いはずだ。
以下では、今回の詐欺事件を例に、経済犯罪がなぜ起きるのか、その背景などについて考察する(裁判で有罪が確定するまでは原則無罪だが、制度を悪用した公務員による詐欺という、犯罪構成要件に対する見解相違が生じにくい罪状であることや、本人が容疑を認めていることなどを踏まえ、犯罪に手を染めたことを前提に議論する)。
実は意外と幼稚な方法だった
経済産業省の職員だった容疑者2名は、2020年12月から2021年1月にかけて、ペーパーカンパニーを通じて虚偽の申請を行い、新型コロナウイルス対策として給付されていた家賃支援給付金550万円を騙し取った疑いが持たれている。この支援金制度は、経産省の外局である中小企業庁が実施しているものなので、同省の職員は制度の詳細を熟知している。2名はこれを悪用して税金を騙し取り、私腹を肥やしたことになる。
公務員が公金に手を付けることは絶対に許されることではなく、しかもコロナ危機で多くの国民が生活苦に陥る中、身分保障された立場の人間がこうした詐欺行為に及ぶというのは、一般常識では到底理解できない。