20代半ばの頃の桐山清澄。柔和な表情は今も変わらない。写真:田丸 昇

(田丸 昇:棋士)

公式戦で1000勝は超一流棋士の証し

 169人の現役棋士の中で、最年長は73歳の桐山清澄九段。棋聖、棋王のタイトルを通算4期獲得した大棋士である。ベテランらしい渋い指し方と底力から、「いぶし銀」という異名がついている。

 桐山は1966年(昭和41)に棋士デビュー以来、55年間にわたって公式戦で通算996勝している。大記録の1000勝まで、あと4勝である。

 過去に1000勝を達成した棋士は、大山康晴十五世名人(享年69)、中原誠十六世名人(73)、加藤一二三・九段(81)、谷川浩司九段(59)、羽生善治九段(51)、佐藤康光九段(51)、有吉道夫九段(85)、内藤國雄九段(81)、米長邦雄永世棋聖(享年69)の9人しかいない。まさに超一流棋士の証しである。

 その桐山に引退規定の壁が迫っている。

 5月14日に行われた上村亘五段(34)との今期竜王戦の対局(5組残留決定戦)で敗れたら、引退となったのだ。しかし、桐山は難しい戦いを制して勝ち、現役を続けることができた。

2010年に新たな引退規定

 棋士が引退する主な事由は、「順位戦」の最下級のC級2組から降級すると該当する。ただし、その時点で60歳未満なら「フリークラス」に編入され、現役を一定期間だけ続けられる。60歳以上だと引退が決まる。

 順位戦は、「名人戦」の予選リーグに当たる。その一棋戦の成績で棋士生命が影響を受ける現行の制度に、以前から疑問視する見方は多かった。

 日本将棋連盟は2010年(平成22)、新たな引退規定を定めた。順位戦で引退に該当しても、ほかの棋戦で所定の実績を挙げていれば、その棋戦は現役を続けられるのだ。

 具体的な例として、リーグ戦に残留(王位戦、王将戦)、決勝トーナメントでベスト4に進出(王座戦、棋聖戦、棋王戦など)することである。

 竜王戦では、4組以上に在籍すれば現役を続けられ、5組だと2期だけ可能である。