2月半ば以降、株安に連動して円高が進行するというパターンが観察されなくなり、株安と円安が同時進行している。ドル/円相場は、いったんは1月6日に記録した94.65円の手前で反転したが、2度目のトライでこの水準を上抜けることに成功。23日のロンドン市場で94.95円までつけた後、24日の東京市場で95円台に上伸。同日の米国市場で96.94円、25 日の米国市場で97.79 円までつけた(2008年11月14日以来の円安水準)。

 足元で円安ドル高地合いになっている背景としては、(1)米国株の底割れに象徴される世界的なリスク回避志向の強まりから投資資金が全般にドルに還流しやすいこと、(2)日本の貿易収支がこのところ赤字になっており、実需の円買いドル売り需要が減退していること(さらに日本企業が海外現地法人のドル資金繰りタイト感を考慮して円転を手控える動きもある模様)、(3)日本の昨年10-12月期の実質GDPの落ち込みが前期比年率▲12.7%とG7で最大になったことなど円の悪材料が目立ち、しかも政治面では改革路線が退潮していることで、2005~2006年を中心に構造改革に期待して日本株や円資産を購入していた海外投資家が見切り売りを強めつつある可能性、(4)円ロングで攻めていた投機筋がポジションを解消し、日本の景気指標悪化や政治情勢混迷を手掛かり材料にしながら逆に円安方向を試す動きに出ていること(マーケットでよくある「一方向がだめなら逆を試してみる」というパターン)、という4点を指摘することができる。

 

 上記のうち(3)の関連では、財務省発表の「対外及び対内証券売買契約等の状況」を見ると、対内株式投資は昨年12月から今年2月前半にかけて、11週連続で売り越しとなっている。投資家別の内訳が公表されていないため、売りの主体が投機筋からリアルマネーに変わってきたかどうかのエビデンスは入手できない。ただし、CME(シカゴ・マーカンタイル取引所)上場の日経平均指数先物について非商業取引の建玉バランス(投機筋の動向を示すとして注目されることが多い)を見ると、売り越し幅はほとんどの週で▲3000枚前後のまま推移しており、投機的な日本株売りを上乗せしている兆候は見当たらない(直近データである2月17日現在の数字は▲2853枚)。