厚生労働省(以下、厚労省)は2021年2月12日、「新たな雇用・訓練パッケージ」を策定したと発表した。新型コロナウイルス感染症拡大による影響が長引き、雇用情勢に厳しさが見られるなか、「休業や離職を余儀なくされた人」、「シフトが減少した人」、「生活が困窮する人」などを支援することを目的としている。この新パッケージでは、「雇用の下支え」と「仕事と訓練受講の両立」という2面から、施策を実施していくという。
雇用を維持しつつ、新たなキャリアへの足がかりとして「職業訓練受講」のハードルを下げる
今般の新型コロナウイルス感染症拡大の長期化により、さまざまな業種で事業縮小や社員の休業などを余儀なくされた企業は多く、労働市場におけるミスマッチの拡大など、厳しい情勢が続いている。
厚労省はこのような状況を踏まえ、休業を余儀なくされた人や、仕事が減少した人などを対象に、「雇用維持」と「生活支援」を両立させつつ、訓練による今後のステップアップを図る新たな施策の実施を決定。「雇用の下支え・創出」と「訓練による雇用の質的強化」をパッケージとして展開していくという。それぞれの内容は下記の通り。
「雇用の下支え・創出」で給付金の対象を拡大
(1)雇用調整助成金の特例措置による雇用維持
現行の雇用調整助成金の特例措置を4月末まで継続し、雇用の維持に務める。5月以降は原則的な措置を段階的に縮減しつつ、感染拡大地域においては現行の措置を維持するなど、柔軟な対応を実施する。また、一定の大企業と全ての中小企業に対し、1月8日~4月末までの休業等については雇用維持要件を緩和する。
(2)大企業のシフト制労働者等への休業支援援助金・給付金の適用
これまで主に中小企業の労働者を対象としていた新型コロナウイルス感染症対応休業支援助成金・給付金を、大企業においてシフト制ほかの勤務体系で働き、休業手当が受け取れない労働者へも拡大する。
(3)感染症対策業務等による雇用創出支援
ワクチン接種体制の確立や地方創生臨時交付金活用事業等、感染症対策業務等により合計10万人規模の雇用を創出。また、ハローワークに専門窓口を設置、求職者への情報提供・職業紹介を積極的に行い、地方自治体の住居・生活支援施策の窓口との連携等を実施する。
「仕事と訓練受講の両立」では収入要件の緩和を実施
(1)求職者支援制度への特例措置の導入(9月末までの時限措置)
職業訓練受講給付金の収入要件の特例措置として、月収要件を8万円以下から12万円以下に引き上げる(シフト制で働く人等)。また、働きながら職業訓練を受講しやすいよう、職業訓練受講給付金の出席要件を緩和する。
(2)職業訓練の強化
就職に役立つ求職者支援訓練・公共職業訓練において、訓練期間や訓練内容の多様化および柔軟化を実施。訓練期間や時間の短縮、オンライン訓練等の対策で、職業訓練を利用しやすい体制を構築する。
(3)ハローワークでの積極的な職業訓練の周知・受講斡旋・就職支援
ハローワークに「コロナ対応ステップアップ相談窓口(仮称)」を設置し、働きながらステップアップを目指す人を対象に、職業訓練の情報提供や受講斡旋、受講結果を踏まえた就業支援等をワンストップで実施。これにより、求職者支援訓練の利用者の倍増(5万人)と、公共職業訓練の5割増(15万人)を目指す。
新型コロナの影響が長期化することにより、企業はますます厳しい雇用情勢を強いられ、先行きが不透明な部分も多い。必要なタイミングで適切なサポートが得られるよう、今後の発表にも注目していきたい。
著者プロフィール HRプロ編集部 採用、教育・研修、労務、人事戦略などにおける人事トレンドを発信中。押さえておきたい基本知識から、最新ニュース、対談・インタビューやお役立ち情報・セミナーレポートまで、HRプロならではの視点と情報量でお届けします。 |