迫りくる「DX」の波に対応するためには何が必要か

「過去の成功体験」といってしまえばそれまでだが、第2次産業全盛期に製造業で求められた人材モデルとは下記のようなものだった。

・偏差値がある程度高い
・性格が素直で、何事にも我慢強い
・協調性がある
・上司の命令に従順

 しかしながら、第3次産業を中心とする新しい企業社会では、自分の頭で考え、新しいアイデアを創造することが重視される。つまり「頭を使う仕事」が中心になっているのだ。世界の先進国では、とうの昔にパラダイムシフトし、「頭を使う仕事」に適した人材を獲得・育成している。その中で日本だけが、ひと昔前の「製造業の工場モデル」に固執し続けていれば、世界に後れを取るのは必然なのである。

 私事で恐縮だが、このほど、長崎県の「職業能力開発審議会」委員を委嘱された。現在、「職業能力開発計画」の改定作業が進められ、そのご意見番を担っている。そこで論じられている内容も、やはり「『製造業』を担う人材をどう育成するか」に終始してしまっている。

 製造業は日本の強みであるし、軽んじるつもりはない。ただ、時代とともに製造業のアサインメントが変わらざるを得ないのは現実的な問題であり、それに沿った位置づけと人材育成のあり方を考えていく必要がある。

 さらに、グローバル社会では、製造業を含めたすべての産業を覆いつくす「DX」の波が迫ってくる。「中小企業だから」、「製造業だから」という理由で、現在求められているパラダイムシフトやDXへの対応などを、関係ないことだと放置してはいられない流れである。

「DX」は、単純にデジタル化するという意味ではなく、デジタル化社会の中で多様な個性を活かしたイノベーション経営が求められている、ということを理解しなければならない。特に、コロナ禍は我々にさまざまな課題を与え続けているが、「いかに迅速かつ戦略的に対応できるか」が勝負の分かれ目となる。必要なのは、やはり「時代に適合する『ヒト』と『ソシキ』が用意されているか否か」である。

 例えば、コロナ禍において極めて厳しい経営を強いられている旅行業界では、星野リゾートが独り勝ちの状態であるといわれている。この事例も「無」から生まれたものではなく、社長の星野佳路氏が、就任以来長く取り組んできた「フラットな組織」=「心理的安全性」が確保されているという「経営思想」と、そこから社員のモチベーションを引き出す「マネジメント手法」があってこそのことだ。個々の社員から続々と新しいアイデアが生まれる企業環境を醸成し、それが経営に活かされた結果なのである。

 これからの時代は、いかなる業界においても、以下の3点が必要不可欠だ。

・社員自らが考えること
・チームで議論し、答えを導くこと
・その答えをOODAループで高速回転させていくこと

 これらを実践できる「ヒト」と「ソシキ」の有無が、「DX時代」を企業が生き抜くための鍵のような気がする。

大曲義典
株式会社WiseBrainsConsultant&アソシエイツ
社会保険労務士・CFP

著者プロフィール

HRプロ編集部

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