女性の部下が妊娠した場合、「体調は大丈夫だろうか」、「今までと同じ仕事ではきついのではないだろうか」と、おそらく上司は配慮するだろう。しかし、その配慮が相手に通じないどころか、「マタニティハラスメント(以下、マタハラ)だ!」と会社に報告されることになってしまう場合もある。そうならないために、どのようなシチュエーションや言動、行動でその危険があるのか、確認しておこう。
業務の軽減は「本人の意向」を聞いてから行なおう
妊娠すると、「妊娠前と比べてどのくらい働けるのか」は個人差が大きい。また、妊娠初期は問題がなくとも、妊娠週数が進むにつれて体調が刻々と変わっていく場合も多く、どの程度不調が現れるのか、それが仕事にどの程度影響するのか、などなかなか見えづらい部分もある。本人でさえ把握しづらいため、上司や周りの人はなおさら状況を知るのが難しい。そのため、「大事をとっておこう」となるのだ。
また、「妊婦健診などで度々休む」、「急な体調不良で休む・早退する」、「産休育休で今後長期休暇の予定だ」という理由で、最初から「妊婦に責任ある仕事は任せられない」と判断をしてしまう場合もある。「妊婦への配慮」から出たものであれ、「職場の都合」から出たものであれ、妊娠したことを理由に、就業時間を通常勤務時よりも減らす、配置換えをする、といったときには注意が必要だ。
まず、産休・育休を理由とした次のような妊婦への取り扱いは違法である。
1.解雇
2.契約の更新をしない
3.更新回数の上限を引き下げる
4.社員をパートタイムにする
5.不利益な自宅待機
6.降格
7.減給、賞与を引き下げる
8.人事考課の評価を下げる
9.不利益な配置転換
10.言葉などのいやがらせ
特にこの中でも、「4.社員をパートタイムにする」、「9.不利益な配置転換」などは、本人が体調を考えて希望するのであれば問題はない。しかし本人が望まないのに、上司が勝手に「このほうが本人のためによいだろう」と考えて行うと、違法になってしまうのだ。
冒頭で書いたように、妊婦といっても「どの程度妊娠前のように仕事ができるか」は、個人差が大きい。必ずしも「妊娠したから業務の軽減が必要だ」とは限らないのである。まずは、必ず本人の希望を聞くことが大切だ。さらに、「業務時間を減らす」、「配置転換をする」といった場合には、希望した、希望していないなどと齟齬が起きないよう、口頭ではなくメールなどでやり取りを行なうことをお勧めする。