(古森 義久:日本戦略研究フォーラム顧問、産経新聞ワシントン駐在客員特派員、麗澤大学特別教授)
中国の武漢で新型コロナウイルス発生が確認されて、ちょうど1年が過ぎた。邪悪なウイルスの大感染は全世界に広まった。無数の老若男女が犠牲となった。
中国政府は自国内で発生したこのコロナウイルス拡散にどう対応してきたのか。特にインターネット上ではどんな措置をとったのか。
アメリカの民間・独立調査機関「プロパブリカ」が中国政府の新型コロナウイルスに対するインターネットでの統制の実態を詳しく調査して、ニューヨーク・タイムズと共同でその結果をまとめてこの12月中旬、公表した。その概要は12月19日付の同紙の記事で報道された。
中国政府の内部文書数千点を入手して、その内容を点検するとともに、中国民間のインターネット関係者からの聴き取りをも加えたこの調査は、中国政府が新型コロナウイルスの発生をネット上でもいかに隠蔽し、虚偽の情報を拡散したかを詳しく明示していた。
大量の工作員を使って情報コントロール
この調査結果はまず、最大の焦点を今年(2020年)2月にコロナウイルスに感染して死亡した武漢市の医師の李文亮氏の動向についての中国内部のソーシャルメディアの政府統制に絞っていた。当時34歳の李医師は昨年12月はじめ、武漢市内の病院で勤務するうち、異様に感染性の高いウイルスの拡散と感染者の増大に気づき、インターネット上で警告を発した。