江蘇省南京で開催された経済シンポジウムの議長を務めた習近平国家主席(2020年11月14日、写真:新華社/アフロ)

(藤谷 昌敏:日本戦略研究フォーラム政策提言委員・元公安調査庁金沢公安調査事務所長)

 中国国営中央テレビによると、習近平国家主席は12月3日、共産党政治局常務委員会の会議で、「現行基準下で貧困県がなくなり、絶対的貧困が解消した」と述べ、2020年を期限とする「貧困ゼロ」目標の達成を宣言した。習氏は、党総書記に就任した2012年以降の8年間で「1億人近い貧困脱却を実現し、全世界が注目する重大な勝利を得た」と強調した。

 中国は2020年に10年比で国内総生産(GDP)を2倍にする目標も掲げていたが、新型コロナウイルスに伴う経済減速で達成が困難となっており、具体的な成果として貧困脱却をアピールした(時事通信12月3日)。

 ここで言う「貧困ゼロ」とは、1人当たりの年間可処分所得が2020年時点で約4000元(約6万3000円)以下の「絶対貧困人口」をゼロにすることである。

習近平の「脱貧困」実現計画

 これに先立つ2015年10月、第13次5カ年計画(2016~2020年)の説明の中で、習近平は、2020年に小康社会を「全面的」に実現しなければならないとして、
(1)「経済の中高速成長を維持する」
(2)「人民の生活の質・水準を普遍的に向上させる」
(3)「国民の素質と社会の文明程度を顕著に向上させる」
(4)「生態環境の質を総体として改善する」
(5)「各方面の制度をより成熟させ、定型化する」
など5つの目標・要求を提起していた。