1984年にMacintoshを発表したスティーブ・ジョブズ (写真:アフロ)

(ターHELL穴トミヤ:映画評論家)

【今回取り上げている映画】

・『マネー・ショート 華麗なる大逆転』(アダム・マッケイ監督)

・『ザ・コンサルタント』(ギャヴィン・オコナー監督) 

・『スティーブ・ジョブズ』(ダニー・ボイル監督)

※以下、ネタバレあり

増えるアスペルガー症候群の主人公たち

 1995年を境に世界は変わりました。Windows 95が登場し、以後パソコンとインターネットが家庭に普及し始め、全世界のIT(情報技術)化が始まりました。米グーグルは2004年に、フェイスブックは2012年に上場し、2020年の現在では世界の時価総額ランキングトップ10企業のうち過半数をIT企業が占めています。

 同時に、ハリウッド映画に新しいタイプのキャラクターが出現し始めました。それは「アスペルガー症候群」の主人公たち。スクリーンの中で彼らは、他者とのコミュニケーションがうまく取れず、周囲から浮いており、しかし特定の分野に関しては著しく秀でた才能を持つ人間として描かれます。

 この“変わった性格”が障害だと言われ出したのは最近のことで、昔はただの変わり者とか、偏屈者とか呼ばれ、陽の当たらない場所に追いやられていたのかもしれません。しかしコンピューター分野の発展とともに、彼らの活躍の場は飛躍的に広がりました。シリコンバレーからアスペルガー症候群(と言われている)の億万長者が次々と誕生する中、ハリウッドは彼らの物語を通して何を語っているのか。3つの作品を通じて探っていきます。