こんなときに相談できる相手は、ひとりしかいなかった。彼の答えが欲しかった。
佐古賢一(ケン)に電話を掛けた。日本バスケットボール界のスター選手。同い年で日本代表をはじめ長い間、コートではライバルとして、私生活としては友人として付き合った「盟友」である。
盟友からの叱責
「チームに必要とされてない」
「正直、キツイ」
「もう、辞めようと思う」
正直に気持ちを打ち明けた。
聞いていたケンが出した〝答え〟という名のパス。さすがはナンバーワンのポイントガードという的確さだった。
「オマエ、俺を見ててカッコ悪いと思ってた?」
ケンも引退前は出場時間が限られていた。5分程度しか出場できないこともあった。
「それでも俺は、その5分のために毎週、準備したんだよ」
カッコ悪いと思ったことなどなかった。
さらにケンは、「確かに、試合に出る上で覚悟は大事なものだと思う」と、それが定まらないわたしの心境に理解を示しながらも、「辞めるのなんて、いつでもできる」と続けた。
「オマエには、今シーズンを続ける責任がある。俺は折茂のファンとして、レバンガのファンとしてオマエを見に行く。そしてそれは俺だけじゃない。北海道には、日本には、オマエを応援している人がたくさんいる。だから、やっぱり責任があるよ。そういうものを背負っているからこそ、レジェンドなんだと思う。だからダメだよ。最後までやる責任があるよ」
彼にしか言えない言葉だった。気持ちが翻った。この言葉がなかったら、わたしは間違いなく途中で辞めていたと思う。
ケンがいてくれて、本当に良かった。
感慨に浸るわたしに、彼はさらなるダメ出しを続けた。昔から、わたしが嫌がるようなことでも、遠慮なく言ってくれる。だから彼に相談するのだが、今回もそうだった。