やさしい株式投資のハナシ

 資産運用に興味があっても、初心者にとって株式投資のハードルは高いもの。本連載では、現役の証券アナリストが株式投資の魅力や付き合い方をやさしく伝えます。

企業の現状と見通しについて知るための情報のとり方

 前回に続き、今回も企業のホームページの活用についてのお話をしたいと思います。

 ホームページのIR(投資家向け)情報は情報の宝庫だとお伝えしました。その中で「企業概要」や「個人投資家向け情報」などをご案内しました。これらの情報は、いわば投資の情報分析の基礎となるものです。投資する企業を知るために、これらの「どんな企業なのか?」についての情報で理解を深めます。

 次のステップは、その企業の現状と見通しについて知るための情報のとり方です。

決算資料を活用しよう

 IR情報の中で企業の現状を知るためには、決算資料を活用したいところです。決算資料には、「決算短信」「決算説明資料」「有価証券報告書」などがあります。

決算短信

 決算短信は、上場企業が決算後に証券取引所のルールに従って提出しなければならない法定開示書類です。

 決められたフォーマットで、業績の数値が事細かく記されています。投資家が企業同士の比較がしやすいように、どのページに何を書くかがあらかじめ決められています。投資初心者の方には少しとっつきにくいと感じられるかもしれません。

決算短信決算短信(サマリー情報)の参考様式(1ページ目)
決算説明資料

 そこで活用したいのが決算説明資料です。決算説明資料は、企業が投資家に向けてアピールしたい点をまとめた、いわばプレゼン資料です。

 作成が義務付けられているわけではありませんが、大体の企業は決算期ごとにホームページに掲載しています。様式や掲載する項目も企業が自由に決めることができます。写真やカラフルなグラフなどを使ってわかりやすくまとめられていますので、決算短信に比べて格段に理解しやすいため、投資初心者の方はまずこちらを参照するのが良いと思います。通常は直近の決算だけでなく、5〜10年分くらいの過去の資料がホームページから参照できます。

増収or減収など、最初は大まかな流れを把握する

 現在は、四半期決算が主流ですが、大きな流れを掴むのには、通期の決算資料を参照するのがわかりやすいと思います。例えば前回も例としてご紹介した富士フイルムホールディングスであれば3月期決算なので、今であれば2020年3月期、19年3月期、18年3月期の3期分くらいとなるでしょうか。

 決算を理解するのには慣れが必要ですが、最初のうちは売上高や営業利益などの細かい数値をいちいち覚える必要はありません。まずは増収なのか減収なのか、増益なのか減益なのかといった大まかな流れを把握するようにすると入っていきやすいと思います。

決算説明会の動画・音声

 ホームページに決算説明会の動画や音声を配信している企業も増えています。動画や音声があれば、ぜひそちらを参照しましょう。決算説明会では、説明資料に沿って社長など経営陣がプレゼンを行いますので、資料の補足説明や投資家に伝えたいメッセージを受け取ることができる貴重な機会です。

 企業によっては、説明後のアナリストやマスコミから質問時間の様子も見る(聞く)ことができる場合があります。市場関係者がその企業のどのような点に注目しているのか、またはリスクと捉えているのかがわかるのでおすすめです。

有価証券報告書

 最後に有価証券報告書をご紹介します。有価証券報告書は金融商品取引法に基づき、企業が年度ごとに発行しなければならない法定開示書類です。決算短信よりもページ数が多く、初心者の方にはさらにとっつきにくいかもしれません。

 ただ、有価証券報告書には事業の状況や企業の概況などが事細かく掲載されています。通常あまりアピールされることのない企業の主なリスクもしっかりと列挙されていますので、投資家として企業のリスクや事業の概況をさらに詳しく把握するのに非常に役に立ちます。投資に慣れてきた方は、ぜひ目を通していただければと思います。

最初はとっつきにくいが、慣れれば企業の横比較ができる

 今回は企業のホームページの情報の活用として決算資料についてご案内しました。

 慣れないうちはこれらの資料はとっつくにくさが先立つかもしれませんが、慣れてくるといろいろな企業の横比較ができるようになります。投資の幅を広げるためにぜひ活用してください。