大震災が発生した3月11日から1カ月以上が経った4月12日、日本政府は福島原発事故の収束への青写真が描けないまま事故レベルをチェルノブイリ原発事故と同評価のレベル7に引き上げました。
この遅きに失した政府発表は、避難を余儀なくされている地域住民の方々をはじめ日本国民の原発事故への政府・東京電力の対応や原発そのものへの不信感を増幅させる結果を招きました。
この現象は日本に限りません。欧米のマスメディアでも目にしない日はない「FUKUSHIMA」の恐怖は海外に伝播し、各国のエネルギー政策を根底から変えようとしています。欧州経済の雄であるドイツの例を見てみましょう。
ドイツ地方選挙の結果
ダイムラー、ポルシェ、ボッシュなど大企業が本社を置くシュツットガルトを州都に擁し、基幹産業が集積するバーデン・ビュルテンベルク州で州議会選挙の開票が3月27日に行われました。
同選挙は福島原発事故によって原発の安全性が最大の争点となる中で行われ、開票の結果、脱原発を主張する緑の党(Greens)が大躍進を果たしました。
同じく反原発を掲げる社会民主党(Social Democrat Party)と連立政権を組み、緑の党からの州首相選出が確実視されています。
一方、アンゲラ・メルケル首相率いるキリスト教民主同盟(Christian Democratic Union)は58年間守り続けた州与党の地位から陥落するという歴史的な敗北を喫し、国政を預かるメルケル政権にとっても大きな痛手となりました。
ドイツの原子力政策の変遷
過去、ドイツの原子力政策は振り子のように振れてきました。
2002年にすべての原発を2022年までに廃止することが法案化されましたが、メルケル首相はクリーンエネルギーを中心とした低炭素社会へのスムーズな移行を実現させるため、原子力を“つなぎ技術”と位置づけ、昨年9月に原子力発電所の平均12年の稼働期間延長を決定しました。