(池田 信夫:経済学者、アゴラ研究所代表取締役所長)

 2010~19年の10年間の世界平均気温は、観測史上最高だったと国連は発表した。マスコミの報道では温暖化が加速度的に進行するようにみえるが、昨年(2019年)11月にIEA(国際エネルギー機関)の発表した「世界エネルギー見通し」は、それとは違う未来を示している。

 20世紀から増え続けてきた世界のCO2の排出のペースが落ち、増加率が下がっているのだ。地球温暖化の最大の原因がCO2の温室効果だとすると、これによって気温上昇も今までの予想より小さくなる可能性がある。

温暖化のペースは減速している

 IEAのレポートでは「持続可能な開発シナリオ」(理想)と「公表された対策シナリオ」(現実)がわけられている。図の下の曲線が理想だが、注目されるのは現実のほうだ。今まで大きく増加していたCO2排出量のペースが、2020年代に減速する見通しが出てきたのだ。

IEAの理想シナリオと現実シナリオ(経産省)

 この最大の原因は、世界的に再生可能エネルギーが急速に普及したことだ。そのきっかけは各国で進められた固定価格買取制度などの支援策だが、太陽光パネルの価格は急速に下がり、2020年代には火力発電と競争できる10円/kWh以下になると予想されている。

 このペースが今後も続くとすると、2100年のCO2排出量はIPCC(気候変動に関する政府間パネル)が2013年の第5次評価報告書で予測した最悪のシナリオ(RCP8.5)の半分以下になり、気温上昇も減速する。

 IEAは気温の予測はしていないが、IPCCのモデルを使って民間研究機関が計算したシミュレーションによると、最悪の場合でも2100年に産業革命前より3℃上昇ですむという。