(酒井 吉廣:中部大学経営情報学部教授)
2月2日、海上自衛隊の護衛艦「たかなみ」が横須賀基地から出港した。これは、昨年(2019年)12月に閣議決定した防衛省設置法に基づく「調査・研究」のために、オマーン湾(ホルムズ海峡のすぐそばまで)、アラビア海北部、バブ・エル・マンデブ海峡の3海域で活動することを目的としている。自衛隊が、1年間に何百回も往来する日本船籍の船の航行安全のために活動することは、日本国にはとても大切なことだ。
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ただ、筆者はこの判断の背景にある2つの事実を正しく認識しなければならないと考えている。
1つは、自衛隊と言えば安倍首相の憲法改正の主たる対象であり、今回の中東派遣はこの文脈の中でどう位置付けられるべきか。もう1つは、現実的に護衛艦「たかなみ」の調査・研究活動はどれほどの危険に直面するのか。この2つである。
もとより筆者は憲法の専門家ではなく、護憲・改憲の議論は現実に即して決めるべきと考える立場だ。また、筆者は米国生活が長く、今も国際的に活動をしているとはいえ一人の日本愛国者である。この立場から、「たかなみ」の安全を祈りつつ、今回だけにとどまらないであろうということを鑑みて、この2点を考えてみたい。
なお、この現実論の先には、現在のイランがどのような状況にあるのか、またイスラム教が平和な宗教かどうかという最近の議論に触れる必要も出てくるが、それは次の機会に譲りたい。