グローバルIPOが持つ本当の意味とは?

 こうして経営にまつわるお金や技術の活用についての話題で対話は続いていったが、最後にもう1つ、どうしても聞いておきたい点があった。

 freeeは昨年12月、グローバルIPOを達成して大いに話題を呼んだ。経営に携わる者にとっては、“IPO”も“グローバル”も重要なキーワード。両氏はこれについてどう考えているのだろうか。

佐々木:なぜグローバルIPOにしたのか、という質問をされることが多いのですが、まず上場をすることによって、より多くの知見をお持ちの方々から経営について意見をもらい、ディスカッションしていくことが可能になります。特にfreeeは起業時からシリコンバレーのベンチャーキャピタルなどから投資を受ける機会を得て、非常に建設的なアドバイスや支援をもらうことができたんです。

 朝倉さんが著書の『ファイナンス思考』で強調されている「短期的なPLに左右されない視点」というのをしっかりと持っている方々に応援してもらい、その価値の大きさを実感してきました。それもあってのグローバルIPOでした。

朝倉:本の中で私は、ファイナンスの機能というのを4つに大別して規定しています。1つ目は事業に必要なお金を外部から適切なバランスと条件で調達すること。2つ目は既存の事業と資産から最大限にお金を創出すること。3つ目が築いた資産を正しく分配すること。そして4つ目が、以上の経緯の合理性をステークホルダーに説明することです。

 日本では「ファイナンス」という言葉を用いると、1つ目の意味ばかり意識する方が多いようですが、投資する側も経営者も4つ目の重要性を軽視している傾向を感じます。グローバルIPOを機に投資家と意見を交わすということは、まさにこの4つ目の要素ですね。

佐々木:「今度こういうチャレンジをするんだ。そのために先行投資するんだ」と考えていても、それをきちんと周囲に説明できていなければ、チャレンジし続ける態勢を維持することはできませんよね。

 逆にしっかりと納得してもらえるように説明できれば、短期的な収益とは関係なく投資してくださるところもあるし、社内の人間についても何のために先行投資をして、その勝算がどうなのかというのを一緒に考える環境というのができていきます。これはfreeeのような若い集団にはとっても大切なことだと思っています。

朝倉:同感です。そういう意味でもファイナンス思考というのは会社のため、経営者のためばかりではなく、ビジネスに携わるあらゆる人が身に付けるべきだと思いますし、それが伴ってこその成長だと、私も思います。

 それに、freeeのようなSaaS型ビジネスの企業は、その事業対象が仮にローカルなものであったとしても、実はグローバルな投資家から理解を得やすい。SaaSであるからこそ、短期的な視点ではなく、長期的にこういう仕組みとKPIで収益を上げていくビジネスモデルなんだ、というのを伝えやすい。ですから、実は世界の投資家の間では日本のSaaSスタートアップは大変注目されていたりもするんです。freeeという先行事例ができたことで日本の他のSaaSスタートアップが続いてくれたらいいな、と期待してもいます。

佐々木:そうですね。仮にSaaS型のビジネスモデルではなかったとしても、あるいはグローバルなプロダクトを持っていなかったとしても、企業としての価値をしっかりと伝えることができれば、道は開かれていくんだという事例に私たちもなれたらうれしいと思います。

朝倉:その通りですね。freeeのような企業の登場によって、説明責任を果たす習慣を日本の他の企業もより重視するようになれば、日本企業全体のガバナンス意識や競争力の向上につながっていくんじゃないでしょうか。2月27日のイベントでも、そうした変革の1つの武器として、ファイナンス的なモノの考え方をお伝えできればよいと思っています。

■佐々木氏、朝倉氏が登壇するイベント「freee Growth.Vision 2020 ~経営革新と成長はここから始まる。」の採録記事は後日アップ致しますので、乞うご期待!! 

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