佐々木:確かに、そもそも何か事業を起こそうという人間は、私もそうですけれど「なんとか食っていければそれでいいや」とは思っていませんよね。「世の中をこんな風に変えたい」というような気持ちがあるから、お金も人も必要になってしまうし、赤字にもなりやすくなるけれども、その現実を踏まえながら「どうにかしたい」と考える。

朝倉:佐々木さんのようなスタートアップの起業家は確実にそういうスタンスですよね。もちろん何代も続く既存事業を粛々と営んでいる中小企業というのも世の中にはたくさんありますし、私はそれも尊いと思っています。

 一方で、今のような変化の時代にたくましく世の中を変革していこうというのであれば、元来持っているはずの商売のセンスを生かしてファイナンス的なモノの考え方を経営に役立ててほしいと願っています。
 

freeeの価値を再認識させてくれたのはユーザーの声

佐々木:私たちのツールを導入してくださるお客さまの多くは、まさに中堅・中小企業の方々なのですが、実はこの皆さんがフィードバックしてくださる声が私たちの価値を再認識するきっかけになったんですよ。朝倉さんがTechCrunchのバトルの時に言ってくださったことと同じ内容なんですけれども。

朝倉:煩雑な会計上の作業が効率化できるとうれしいということですか? それとも、そこで浮いた時間に価値がある、という部分?

佐々木:後者の意見です。同じような声がどんどんフィードバックされてきて、「今まで帳簿をつける作業でうんざりしていたんだけれども、それが短時間で済むようになったおかげで、自分の会社の経営数字を改めてきちんと見ることができるようになった」と。

「実はうちの会社のお金はこんな風に動いていたんだな」という気付きを、どこかで見過ごしていたんだというわけです。

朝倉:なるほど。最近、AIをビジネスに活用するといった話題になることが多いですが、「機械が人の仕事を奪う」といった意見が噴出すると、それに対して「そうじゃない。作業に費やされていた時間から解放された人間が、そこで初めてクリエイティブな仕事に専念する時間を得るんじゃないか」といった反論が必ず出てきますよね。

 freeeに関していえば、サービスを使って業務を効率化することで、より生産的な作業に時間を割けるようになったというフィードバックがあったということですよね。経営者がファイナンスをしっかり考える、という意味でも実に大きな価値。でも、それについては佐々木さん自身が以前から主張していたじゃないですか。

佐々木:もちろん、そういう利点を主張してはいましたが、実際に使ってくれたお客さまから反響が返ってきたおかげで、営業やマーケティングの戦略に積極的に生かしていくきっかけになったんです。

 それまでは「freeeを使えば作業は20分の1になりますよ」という発信がメインでしたが、さらにその先にある価値として「経営数字をしっかり把握できる」「パフォーマンスの向上を経営上のクリエイティブな価値創造に生かせる」というメッセージの発信に力を入れていくようになったんです。