PEファンドで投資アナリストを担った後、データサイエンス系スタートアップのALBERTでCFOを務め、その後GoogleのAPACリージョンで中小企業向けマーケティングに携わった佐々木大輔氏。
オンライン上で会計処理を行えるサービスで2012年に起業を果たすと、同年開催の「TechCrunch Tokyoスタートアップバトル」にエントリーし、優勝賞金獲得を目指すコンペティションに参加した。この時、審査員の1人だったのが朝倉祐介氏だった。
朝倉氏といえばマッキンゼーでコンサルタントとしての実績を築く一方、自ら学生時代に立ち上げたスタートアップであるネイキッドテクノロジーの事業売却を機にミクシィの一員となり、2013年には同社CEOに就任する。つまり、その直前のタイミングで2人は初めて出会ったことになる。
経営支援のプロフェッショナルとして活躍した経験を蓄積していた両氏はこの後、自ら経営トップとして企業を育てていく道を選ぶことになったわけだが、その歩みは決して楽なものではなかったようだ。
佐々木:私はGoogleや投資ファンドにいた時にも事業計画の策定を仕事にしてもいましたから、freeeを立ち上げた時にもごく当然のプロセスとして事業計画書を書き上げました。「中小企業で進展していないテクノロジー化をこの会社で推進していくんだ」という定性的なミッションやビジョンについてはもちろんのこと、定量的な部分、要するに数字の面も考えていきました。
「経理分野の仕事が一向に効率化されていないという実情を抱える中堅・中小企業に役立つツールをオンラインで提供すれば、きっと支持をしてもらえる。1年間に何社程度の企業が課金してくれれば、このくらいの収益を得ることも可能なはず・・・」という見立てで作成したわけです。多分ほんの3時間ほどでそれなりに練り込んだ事業計画書を書き上げてしまったのですが、では今その計画通りにどこまで実現できているかというと、全然違った現状だったりもします(笑)。
朝倉:分かります。創業時というのはどんなに綿密な事業計画を備えていても、すんなりその通りにうまくいくとは限りません。事業自体だけでなくお金の出入りについてもそうです。
結局のところ日々の資金繰りのことが頭から離れませんよね。私も起業した時には、毎日のようにオンラインバンクの預金残高の画面を眺めながら、パソコンのF5キーを無闇に押して「なんか間違って入金とかされてないかなぁ」などと思っていたりしました(笑)。
2018年に『ファイナンス思考』という本を書いたので、そこでは「目先の利益や売り上げに一喜一憂して目的視してしまう“PL脳”から脱却しましょう」などと主張してはいますが、零細スタートアップ起業時の経営者にとっては、ファイナンスやPL以前に、日々の資金繰りが最重要事項。とにかく通帳とにらめっこをして、「あの支払いをこう待ってもらって、その間にあれをこうして」みたいなことを考えているから、寝ている時にも資金繰りで炎上する恐ろしい夢を見て、自分の寝言で起きてしまったり(苦笑)。
佐々木:えー、朝倉さんがですか? 意外すぎる。