2020年、人事は過去の「昭和遺産」を清算できるか

 今年の主要トピックを改めて見てみると、これまで見慣れたキーワードが出てこないことに気づきます。数年前までは、「ダイバーシティ」や「働き方改革」といった大きなくくりの言葉が主要な人事のキーワードでした。しかし今年は、個別具体的な取り組みが増えている印象です。

 つまり、日本の人事は新たなフェーズを迎えるタイミングです。昨年、令和の新時代を迎えた日本の人事は、今年、「昭和の遺産」から本格的に脱却することになります。「昭和の遺産」とは、「年功序列」や「終身雇用制」などの旧来の日本型人事制度を背景に同じ会社で最後までバリバリ勤め上げる働き方や、会社勤めを生活の中心に人生を考える生き方です。

 2020年以前の人事は、すべての社員を平等に扱う「一括」と、どの企業も同じ人事制度を保つ「横並び」がキーワードでした。しかし、これからは働き方の多様化により社員に対して個別対応が求められるようになるでしょう。人材不足による採用の激化や、副業解禁時代の幕開け、そして働く場所を選べる時代。これからは働く人が自分の意志でいつでも、どこでも、働ける時代です。それぞれの企業の人事が、すべての働く人にしっかりと向き合っていかなければなりません。個人の力がより強くなる時代では、より一層、私たち人事は「選ばれる会社づくり」をしなければなりません。

 2020年、日本の人事は「昭和の遺産」から脱却し、ここで働きたいと選ばれる会社づくりに本当に取り組めるのでしょうか。今年の最後には、まだ昭和を引きずる会社と、新たな時代に選ばれる会社がはっきりと分かれているでしょう。

著者プロフィール
 

中野 在人

東証一部上場大手メーカーの現役人事担当者。
 

新卒で国内最大手CATV事業統括会社(株)ジュピターテレコムに入社後、現場経験を経て人事部にて企業理念の策定と推進に携わる。その後、大手上場中堅メーカーの企業理念推進室にて企業理念推進を経験し、人材開発のプロフェッショナルファームである(株)セルムに入社。日本を代表する大手企業のインナーブランディング支援や人材開発支援を行った。現在は某メーカーの人事担当者として日々人事の仕事に汗をかいている。
 

立命館大学国際関係学部卒業、中央大学ビジネススクール(MBA)修了。
 

個人でHRメディア「HR GATE」を運営中。
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