2020年の年明けに起きたイラク情勢の緊迫化。米軍による空爆やアメリカのトランプ大統領の発言によって、金価格やビットコインの価格は大きく動きました。
「有事の金」は一時1600ドルを突破
投資の世界には「有事の金」という格言があります。有事とは、主に政治的な緊張状態のことを指します。国際的なテロや国同士の衝突が起きると、世界の投資家は株式を売って金(ゴールド)を買うため、金価格が上がりやすくなるという現象です。
2020年1月3日に、米国のトランプ大統領の命令に基づいて米軍がイランをドローンで空爆し、イラン革命防衛隊のガセム・ソレイマニ司令官を殺害したというニュースが世界を駆けめぐりました。
その後、イランの革命防衛隊はイラク国内の米軍の拠点を攻撃。イラン情勢はさらなる緊迫化が懸念されましたが、トランプ大統領は日本時間の9日午前1時頃に「米国は軍を使いたくない」と述べ、武力の行使を避けたい意向を表明しました。
イラン情勢の変化に、金融市場も反応しました。金価格は以下のような値動きとなりました。
【図表1】日本時間1月1日~9日14時頃までの金価格の動き
米ドル建ての金先物価格は一時1600ドル/トロイオンスを超え、2013年以来の高値を付けました。まさに「有事の金」の格言どおりの値動きです。
その後のトランプ大統領の発言によって金が値下がりしたのも、戦争の懸念がひとまず去ったことの表れといえます。
ちなみに金の史上最高値は2011年9月の1920ドル台。当時は2008年に起きたリーマン・ショックと、その後の欧州債務危機などの影響で世界経済が不安定だったために、株式が売られて金が買われる傾向が強まりました。