(佐藤 けんいち:著述家・経営コンサルタント、ケン・マネジメント代表)
米国を代表する週刊誌TIMEには、「今年の人」(Person Of The Year)と題して、その1年を象徴する人を取り上げてカバーストーリーにする特集企画がある。毎年、誰が選ばれるか世界中の関心のまとになっている企画だ。政治家や経営者、映画俳優などセレブが選ばれることが多いが、かならずしもそうではない。
今年2019年に選ばれたのがグレタ・トゥーンベリさん。スウェーデンの16歳の高校生の環境活動家だ。日本でもよく知られている。環境問題を訴えて大人を断罪する活動姿勢に対しては、先進国の若者を中心に熱狂的に支持されているだけでなく、世界中の大人たちからの揶揄やバッシングの嵐にもさらされている。
今年の日本は耐えがたい猛暑であり、そのためもあって2020年の東京オリンピックのマラソンがIOC(国際オリンピック委員会)の一存によって札幌開催に変更されるという一騒動があった。その背景として、欧州が日本以上の猛暑に見舞われていることに目を向ける必要があるだろう。軒並み40℃以上の高温を記録した欧州では、地球温暖化対策は日本以上に喫緊の課題と受け止められている。
授業をさぼって座り込みのデモを行うグレタさんの活動方法や、終末論的な響きさえある訴えには、眉をひそめる大人も少なくないだろう。環境問題解決はそんな単純なものではないのだよ、と。トランプ大統領のように、グレタさんを揶揄したくなる気持ちもわからなくはない。
私も当初はグレタさんには冷ややかに眺めていたのだが、環境問題が重要なことまで否定するわけではない。環境問題に世界中の目を向けさせたという意味において、グレタさんの存在そのものに意味があると言うべきではないか、と考えが変わってきている。