宮崎県延岡市で保険業や資産運用のアドバイスに携わる小田初光さんが、地方で暮らす生活者のリアルな視点で、お金に関するさまざまな疑問に答えます。第1回目のテーマは元本割れへの不安。多くの人が抱える「損をしたくない」という不安に対して、小田さんは発想の転換を提案します。
【質問】 投資は元本割れが不安。元本割れしない方法でないと安心できないのですが、どうしたらいいのでしょうか?
私は47都道府県でも平均年収が下位の宮崎県でこの記事を制作しているのですが、お金の価値観などで考えさせられることが多く見受けられます。老後2000万円不足問題にしても、どれだけの人が深刻になって取り組もうとしているのか、心配でなりません。宮崎弁で「何とか、なるじゃろ。今までもそうじゃったから」「じゃけんどんが誰にも迷惑かけんからいいじゃろ」などなど、驚くほどポジティブな考えを持った方が多数なのです。これからです、誰も経験したことのない大格差社会が始まるのは……、いや、もう始まっているのです。
特に地方の少子高齢化による人口問題は避けて通れないものです。人口が高齢化すれば、年金を受け取る人が増え、支払う人が減るので、年金の受給額は減ることになります。今あるお金や、これから入ってくるお金を運用するなどして、少しでも資産を運用・防衛する必要に迫られています。これまで多くの方から「お金を増やす」というテーマで相談を受けてきました。その内容をもとに、皆さまが抱えている資産運用に対する不安と、その解決策について、本連載を通じて考えていきたいと思います。
投資していなくても「何気ない出費」でお金を減らしている
私が受けた相談でも「お金を増やしたいけど、株などは怖いし減ったら戻ってこんで、損するじゃん!」と言う方がいました。確かにごもっともな話ですが、「お金が減ったら損」という言葉には違和感があります。
自身で生活していくのに、コンビニで食べ物を買ったり、趣味に使ったりという何気ない出費にはほとんど抵抗を感じません。誰もが日頃から「お金を普通に使って減らしている」のです。この普通に使っているお金を少し、投資に回してみてください。たとえそのお金が減ったとしても、普通に使えばただなくなるだけのお金ですから、気持ちが楽になりませんか?
気にしないこと。この心理が投資には大切です。元本割れの不安も、「使ってしまうお金」と考えれば前向きになれる気がしませんか? スタート時点の気持ちで、投資の勝敗は決まっているかもしれませんね。
「ほったらかして忘れてた」でもお金は増える
ここで私の経験談をお話しします。2007年になりますが、2人のサラリーマンが同時に日本株メインの投資信託で定額積立を開始しました。ところが、皆さまもご承知のように、同年にはサブプライムローン問題が、その翌年にはリーマン・ショックが発生。世界中のあらゆる資産が大暴落に陥って、特に日本株は4~5年間ほど低迷期が続きました。この時、2人のとった行動で天と地の差が発生したのです。Aさんは、即座に証券会社に不満をぶつけ、資産が半分くらいに減ったまま口座を解約しました。Bさんは、相談のうえ積立投資を続行しました。結果、現在Bさんは資産が積立額の約1.6倍に増え、今ではその利益を一部、自分のために使っています。
一般的に「お金の増えている人」の意見を聞くと、「ほったらかしして忘れてた」などの意見が多いのが現実です。「ほったらかす」ことで、10年あるいは20年にわたる長期的な積立投資などの運用が実を結び、実績となりえるのです。
iDeCoで強制的に「ほったらかし」の状態を作る
では、投資初心者は具体的に何から始めればいいのでしょうか? 私でしたら、ズバリ個人型確定拠出年金(iDeCo)をお勧めします。その最大の理由は、途中引き出しが原則60歳までできないこと。先ほどのBさんのように、長期の積立運用を続けられるのです。引き出せないという仕組みによって、「株価が下がったから投資をやめたい」と思って積立運用をやめてしまう人間の弱さをカバーでき、強制的に積立額が増額していくというメリットがあります。
また、積み立てた年間総額が全額所得の控除に充てられ、確定申告でお金が一部戻ってきます(会社員の場合は一般に年末調整)。おおよそですが年収500万円、年間24万円積み立てた場合、調整額として2~3万円増えちゃう計算になります。今の低金利、定期預金に100万円預けて、金利が1年で100円しかない時代に、24万円の積立で少なくとも2万円が増える。これは使わない手はありませんね!
iDeCoでは投資の利益も非課税です。税金に対するさまざまな優遇措置がiDeCoのメリットですが、もちろんデメリットもあります。それは、メンテナンスも多少は必要だということ。年金不足のお金を少しでも増やそうと思ったら、運用の中身の見直しも考えていきたいところです。これから先は、自分自身で勉強して、将来に備えていただきたいと思います。