レオス・キャピタルワークス

国内最大級の投資信託『ひふみ投信』『ひふみプラス』を運用するレオス・キャピタルワークスの藤野英人社長に、近著『お金を話そう。』のことや、お金や投資との向き合い方について話を聞きました。

「稼ぐ」「使う」「投資する」をすべて語る

―『お金を話そう。』を書いたきっかけは何だったのでしょうか。

藤野 僕たちの人生で「どうやってお金を稼ぐか」はとても大事なことです。稼ぎ方についての本は世の中にたくさんあります。稼いだあと、どうやって賢く使うか。これでいうと節約に関する本もけっこうあります。貯まったお金をどう投資するのかということで、投資の本もたくさん出ている。でも、「稼ぐ」「使う」「投資する」という3つすべてを書いた本は少ないと思っていました。だからお金について総合的に、いろいろな側面から語ることができたらいいというのが、この本が生まれたきっかけです。

多くの人は、お金に関して得意分野と苦手分野があると思います。たとえば節約が好きな人は稼ぐことや投資が苦手だったり、逆に稼ぐことが得意な人は節約が苦手だったりします。年収1000万円以上稼いでいるのに貯金ゼロという人もいれば、年収数百万なのに貯金がいっぱいという人もいます。がんばって稼いで、がんばって節約した結果お金がたくさん貯まっても、それを有効に消費したり、投資をしたりできている人も少ないように思います。

そもそもお金について考えることって、自分の生活や人生を考えることでもあります。稼ぐ、使う、投資するというのは、その人の生き方そのものです。『お金を話そう。』でお金の稼ぎ方、使い方、投資の仕方に触れることで人生が軽くなったとか、やる気が出たとか、生きることがおもしろくなったと思ってもらえたらうれしいですね。

藤野英人さん藤野 英人さん
レオス・キャピタルワークス
代表取締役社長 最高投資責任者

―本の内容は、お金に関する質問とその答えというQ&A形式で展開しています。投資に直結する質問から仕事や生活にまつわる質問まで幅広く、なかにはかなりユニークな質問も見受けられます。

藤野 本を書くにあたって、実際にいろいろな人と話をしてみようということでお金について特に詳しいわけではない方を数名呼んで、座談会を行いました。その座談会の内容を起こしたものがこの本のもとになっています。ですから僕がひとりで考えていることというよりは、お金に関してあまり知識がない人たちが聞きたいこと、疑問に思っていることに答えて、それを読みやすい形に整理したのがこの本の特徴だといえます。

お金があれば人は幸せになれるのか?

藤野 本の前書きでも書きましたが、僕がお金の話をするときによく尋ねるのが、「10億円あったら何をしたいですか」ということです。
この10億円という設定がちょうどよくて、これが1億円だと、東京なら家を買うだけでだいたい終わってしまう。100億円だとあまりにも金額が大きすぎてイメージできない。一般的に暮らす人にはちょっと手が届かない範囲だけど、自分の人生の延長線上で考えられる、その適正な額が10億円くらいなんです。

この質問をすると、皆さんいろいろなことを言います。会社を辞めてふらふら旅行したいとか、起業したいとか、寄付の団体を作りたいとか。家だけでなく別荘も作りたいとか。
その答えを聞いたあとに、僕はいつもこう尋ねます。
「それってお金が制約になっているのでしょうか?」

よく考えてみると、お金が制約になることはそんなに多くありません。転職は今すぐにでもできるし、世界旅行だってバックパッカーのような旅もできるし、それならそこまで金額が高いわけではない。行動の制約になっているのはお金ではなく、自分の気持ちであることの方が多いのです。

逆に考えると、お金さえあれば幸せになれる、今自分が幸せじゃないのはお金がないせいだ、と思っている人が多いということ。でも、仮にそういう人たちが実際に10億円を受け取ったとしても、幸せになれない人の方が多いように思います。

幸せはお金が規定しない要素が意外と重要で、お金があれば必ず幸せになれるわけではありません。でも、生きるためにはお金が必要なことも事実です。そんなお金とどうやって向き合っていけばいいのかをあらゆる角度から考えることによって、人生がよりカラフルに、立体的に見えてくるんだと思います。

藤野英人さんインタビュー・中編
藤野英人さんインタビュー・後編