40名という少人数の入学定員と、MBA修士(経営管理)、MIPM修士(知的財産マネジメント)をそろえる体制が特徴的なKIT虎ノ門大学院。教育力日本一をめざす金沢工業大学(Kanazawa Institute of Technology)のフラッグシップ拠点として、2004年に東京の虎ノ門に開設した社会人向けの大学院だ。
MBA、知的財産、メディア&エンタメ、AIなど90科目以上の多彩な授業科目を開講し、超少人数ゼミによる修士研究指導という実践型カリキュラムを通じて、イノベーション時代に対応できるMBA人材・知的財産マネジメント人材を輩出している。
弁理士×経営の知識
キユーピー株式会社 研究開発本部 グループR&D推進部 未病改善プロジェクトチーム 弁理士。 2016年4月にKIT虎ノ門大学院イノベーションマネジメント研究科入学(山田ゼミ所属)、2018年3月に修了しMBAを取得。
キユーピー株式会社の知的財産室で企業内弁理士として働きながら、研究開発本部で『未病改善プロジェクトチーム』を率いる河野純範さんも「KIT」の修了生のひとり。
キユーピーに入社して営業職で8年間を過ごした後に知的財産室に移った。
「営業から知財部門に異動する人は少ないので、その希少性と弁理士としての専門性を買っていただき、徐々に面白い仕事を任せてもらえるようになった。特許を取るだけでなく自社の特許を他社に売り込んだり、他社との交渉によって協業プロジェクトを作ったり。仕事がどんどん楽しくなっていき、希少性や専門性は仕事を楽しくするポイントだと感じたんです」と河野さん。
「であれば、弁理士の専門性の上に経営の知識を体系的に学ぶことで、もっと面白いことができるようになると思った」という。
知財を経営に活かすという思いから、「MBAのコースでも知財の先生と関わりが持てるKITを選択したのは必然だった」という河野さん。
「入学前に1科目から受講できるKITの科目等履修制度を活用し、一色正彦先生に教わった『交渉学』が知財実務でとても役立っており、実践的な学びが得られるという印象もありました」
そして一番大きかったのは、超少人数ゼミの存在だ。KITでは、修士論文執筆のために毎週、担当教授と打ち合わせを行う。「年間100万円の学費で、超一流コンサルタントの教授から毎週アドバイスをもらえるなんて、安いと思った」と河野さんは振り返る。
常に発言を求められる
KITに入学して
実際に入学すると、「MBAの授業の緊張感に衝撃を受けました」と河野さん。最初の授業で三谷宏治教授の『戦略思考要論』を受けたときのことを語る。
「学生とコミュニケーションを取りながら授業を進めるスタイルなのですが、まずい、頑張らないと置いて行かれると思いました。集中力を切らさず授業を受けないと、まったくついていけない。そして終わった後どっと疲れを感じる。この経験は鮮明に覚えています」
KITでは最初の基礎科目のみ30人程度の授業となるが、発展科目になっていくにつれ人数は減り、5人や10人の授業も多い。
「学生も、面白い経歴の人が多かった。経営者や医師や大学教授などすでに素晴らしいキャリアを持った人、弁護士・弁理士・会計士といった士業の人もいる。やり取りを聞いているだけで視野が広がった」という。
授業とゼミの接続
ゼミ担当教授でもあった山田英二教授の『ソーシャルビジネス特論』も、「営業出身で、ものを売ることがビジネスだと思っていた私にとって、大きなインパクトがありました」と河野さん。
ソーシャルビジネスの授業にインスパイアされた河野さんは、修士論文のテーマとして『子供の食の貧困に対してCSR以外で食品企業ができること』を選んだ。
白熱した講義
「子供の食の貧困に対する取り組みとしては、例えば子供食堂があります。支援も寄付も大事ですが、利益が取れないと継続、拡大が難しい。継続のためにはソーシャルビジネスこそ堂々と利益を取るべきなのだという考え方を教えていただきました」
「それに、ソーシャルビジネスに関して言うと、むやみに他社を排除する必要もない。各食品企業や各自治体が同じことをどんどんやって、日本全国に広げることが理想です」
「ゼミでは、すべてが変わった」という河野さん。「物事を考える順番を学び、方法論を学んだ。全体を見てものごとを考える高い視座を得ました」と振り返る。
動くことの大事さを教わった
弁理士として経営を学んだ河野さんは、KITの特徴でもある「知財と経営の連携」の恩恵も受けた。知財・経営の共通科目で、大学と企業がいかに共同してオープンイノベーションを実現するかを学ぶ高橋真木子教授の『産学連携・技術移転特論』は「そのまま実務に結びつき、大学の知財組織と一緒に始めたプロジェクトもある」という。
「授業期間中にプロジェクトを始めると、先生からすぐにアドバイスをもらえる。学んだことは即使ってみよう!と、どんどん行動しました」
動くことの大事さを学んだと河野さんは振り返る。「言い換えれば動かないともったいない。動けば誰かがサポートしてくれる。それまでの自分はあまり行動力がなかったので、これは大きな成長でした」
「まずは動く」ようになった河野さんは、「アポイントを取ってから具体的な相談事項を考えるというスピード感で動くようになった」。
「相談事項をまとめるときは三谷先生に教わった『重要思考』を使う。これは、一番大事なものは何かという軸を常に持って物事に取り組む考え方。ポイントをずらさずに、走りながら考えても何とかなるようになりました」
在学中の行動が今につながっている
河野さんは現在、知財室の業務を続けながら、研究開発本部の『未病改善プロジェクト』でチームリーダーもつとめる。
「病気になりにくい身体を食の力で作ろうというプロジェクトで、具体的には病気になる前に検知して、食の力で予防するというもの。積極的に社外の研究機関と共同研究を進め、事業化を目指しています」
「これは、もともと社内の研究者が、面白い研究成果が出たから経営者にプレゼンするというところから始まりました。私がMBAに通っているのを知っていた役員から、研究者のプレゼン資料作成のサポートをしてくれと頼まれたんです」
関わるうちに、河野さん自身も面白いと感じ、研究者と一緒に社内にはたらきかけてプロジェクトを組織化していった。
「KITに入学したからプロジェクトリーダーのチャンスをもらえたし、その後も動き続けたから今があると思っています」という。
仕事を楽しむために
「私は、仕事を楽しむことの優先順位を高く考えているんです。仕事って、これだけ時間を費やしているので、楽しむに越したことはないですよね」と河野さんはいう。
「ただ、楽しむためには実力やスキルが必要となってくる。そのために何が必要か、何をしたらいいか、不足分を補っていくという考え方をする。そうすると、良い方向へ回っていきやすい気がしています」
「今の目標は、未病改善プロジェクトを成功させること」と話す河野さん。「食品メーカー全体が連携して取り組まないと実現できない大きなテーマです。うまくいっても5年10年かかるような内容。でも絶対にお客様の健康に貢献できる事業になると確信しています」
「楽しみながら、全力で取り組みたい」と意気込む。
<取材後記>
KIT入学前からぶれない「仕事を楽しむ」という河野さんの軸。そのために必要なものを得ていくという考え方は、とてもシンプルで、同時にとても前向きだ。
すべての物事に『重要思考』を使い、まず行動するという例をいくつも聞いて、河野さんがKITで得たものはスキルだけでなく、考え方のアップグレードなのだということが確かに伝わってきた。
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