KIT虎ノ門大学院は、金沢工業大学(Kanazawa Institute of Technology)のフラッグシップ拠点として、2004年に東京の虎ノ門に開設した社会人大学院。
同大学院のイノベーションマネジメント研究科を修了すると、MBA修士(経営管理)かMIPM修士(知的財産マネジメント)が取得できる。
定員は40人。10人から20人の少人数授業と、専修科目としての超少人数ゼミを通じて、トップマネジメント中心の実務家教員が、MBA、知的財産、メディア&エンタメ、AI(人工知能)といった実務スキルを教える。企業経営者や事業企画部門、経営企画部門等の担当者、経営コンサルタント等となるビジネスエグゼクティブを育成することが目的だ。

海川佳子 ※左は梁瀬泰孝社長
2016年4月にKIT虎ノ門大学院イノベーションマネジメント研究科入学(上野ゼミ所属)、2017年3月に修了、MBA取得。企業価値を創出するため広報PR・ブランディング、IR、経営企画の業務に就く。PRSJ認定PRプランナー、日本IRプランナーズ協会CIRP。

株式会社ギガプライズの常務執行役員として、経営企画室の室長を務める海川佳子さんはMBAを取得した修了生。
同社に転職したころに、梁瀬泰孝社長が「いずれ経営層として活躍する意識を持って、体系的に経営を学ぶマネジメントを探している。一緒に学ばないか」と社員に声をかけたのがはじまりだった。
広報・PR、マーケティング、ブランディングの業務に携わっていた海川さんは、レピュテーションや企業価値を上げるにはIR、経営企画など経営の観点が必須と総合的に業務をこなす方向に舵をきった。「市場やテクノロジーの最新動向を見据え、現場の生の声を加味しながら経営層をサポートする経営企画室として、経営を体系的に理解することが必要だと思っていたころでした」と、二つ返事で手を挙げた。

社会人の時間的制約に配慮し、最短1年(標準修業年限が1年)で修了が可能であるのはKITの特色だ。さらに少人数制での学びと1年で修了できることに惹かれ、海川さんはKITを選び、梁瀬社長と一緒に入学した。虎ノ門という場所や、現役コンサルタントを中心とした講師の質も魅力的だったという。

ヘビーな1年間を「胆力」で走り切る

在学中は企業戦略や戦略思考をはじめとしたビジネスの本質を授業で学んだという海川さんは上野善信教授のゼミでは、思考を論理的に積み上げる「見通しを立てる力」に触れた。また、モチベーションやQOLを維持するための礎として、『戦略はトレードオフ』という、専攻副主任の三谷宏治教授の言葉から、「全部はできない、捨てるものは捨てる」そう思いながら、1年間という限られた時間の中で学びの精度を上げることの意味を学んだ海川さん。

超少人数のゼミにも鍛えられた。上野善信教授のゼミでは、院生自身が関わる業務やビジネス、組織の変革を研究テーマに論文を書くケースも多いが、海川さんは、問題意識であった「企業価値を高めるPR活動に必要なPR組織の能力に関する分析」をテーマに修士論文を書いた。
「修士論文のエビデンスとしてアンケートやヒアリングを実施する過程で、かねてより興味を持っていた外資系大手PR会社にもアクセスしました。そのご縁で、“戦略コミュニケーション研究会”へお誘いいただきました。自分だけだと知りえないような方と一緒に、定期的にコミュニケーションの在り方や世界のPR戦略について研究しています。論文を書くことはよいきっかけでした」と振り返る。
働きながらの修学の効果は、学びをすぐに活かす実践の場があることにもある。

ヘビーな1年だった。ギガプライズ創業20周年の節目で仕事は山積み。通学は社内全体に公開されており、甘えが許される環境ではなかった。「定時ののちに通学し、その後会社に戻る日もありました。パンを片手に勉強をしていました。当時を振り返ると、もう一回はできません」と海川さんは笑う。
「でもそれを決めたのは自分。だれも代わってくれません。学びの現場で、自らの知識や理解不足を目の前に突き付けられながら、最短修了年限の1年間で修了までやり切れたことで以前より胆力がついたとは思います」という。

今も実務で学びを続ける

今、海川さんが室長を務める経営企画室は会社の業務拡大に伴ってできた新しい部署だ。海川さんも新しい戦略のもとで経営をサポートしている。

「大学院の学びを通じて新しい観点を得ました」と海川さんは語る。
「門外漢の学びは、慣れ親しんだ自らの思考とは違う観点で答えを出す必要があります。たとえばオペレーション・マネジメントは、経営企画室の業務に直結しませんが、新しい知識、知見によって、プラスアルファで現業へのヒントを見出すことができます」

新しい知識、知見による現業へのヒントとは、経営する側に立って見る観点、まさに「見通しを立てる力」だ。修了したのちも、常に「ギガプライズの場合はどうですか?」と梁瀬社長と議論しながら、KITで学んだ理論を実務に応用させる海川さん。
「理論は学びました。でも大学院で学んだから何かができるということではないと思っています。学びは学びであり、実践とは違います。体系的に経営を学び、失敗も含め実践の繰り返しによって変革できると信じています」という。

(梁瀬社長コメント)「知恵を持つことで余裕ができる」
海川さんと一緒にKITに通学していた梁瀬社長は、学びを通じた海川さんの変化を「余裕ができてきた」と表現する。
「IR やPR、ブランディングの分野以外の面が見えるようになってきて、こんなこともあるのだという経営の難しさも感じているはず」「ロジックで解決できないものが山のようにあるのが、経営。今までの海川さんにはロジックだけで解決する部分もあったが、今は『そういうこともありますね』というゆとりの部分を持つことができてきている。広がりを感じる」「人よりいろいろな知識や知恵を持つことで、余裕ができる。余裕のあるところに人が集まる。組織ができる。海川さんは、まわりに人が集まってくる段階になってきた」と評価する。

 

<取材後記>

今後やっていきたいことは何ですかという問いに、「まずは目の前の目標に向けて邁進したいです。それをクリアするとまた次の課題が見えてくると思います。その繰り返しなのかもしれません」と答える海川さん。
「ギガプライズの成長に伴い、業容や組織が拡大し変革期を迎えています。ステークホルダー、シェアホルダーにとって有益な企業として何が実現できるかを経営陣とともに策定し、従業員にとって働きやすい環境を整えられるよう組織のあり方を見直し、経営管理や企画IR、広報・PR、ブランディングなどを通じて最善を尽くすことが今の目標です」
「3年から5年のスパンで、自分ができることを最大限にしながら、枠は決めずに目標達成のために具体的なチャレンジを続けていきたいです」という。
次に現れる目標は何だろうか。楽しみである。

 

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