「教育付加価値日本一」を目指す金沢工業大学(Kanazawa Institute of Technology)が東京の虎ノ門に作った、社会人大学院のK.I.T.虎ノ門大学院。
ビジネス分野と知的財産分野の科目を取りそろえ、“知財の分かる経営人材”、“経営の分かる知財人材”の養成を目的とした教育を提供する。修了するとMBA(修士(経営管理))やMIPM(修士(知的財産マネジメント))の学位を取得できる。
入学定員は40人、在学生には専任教員によるゼミに所属することが義務付けられているなど、少人数制のきめ細かい教育が特徴だ。

松田光憲
2015年4月K.I.T.入学(三谷ゼミ所属)、2016年イノベーションマネジメント専攻に転専攻、2017年3月修了。修了と同時に株式会社オズビジョンに転職。現在は会社のビジョン実現のため組織変革を担当。

松田光憲氏はK.I.T.虎ノ門大学院イノベーションマネジメント研究科でMBAを取得した修了生。入学時には「株式会社はてな」の人事・総務部に勤めていたが、同大学院に通ったことがきっかけとなって、修了と同時に株式会社オズビジョンに転職したばかりだ。
「現在は、ポイントサイトなどを運営する同社の事業推進部で、会社のビジョン実現のための組織変革を担当している。ストーリーを持って、組織の革新成長を目指した戦略アプローチを作る役割を期待されている」とやりがいを語る。
 

きっかけは問いと出会い

 しかし、「入学したときには転職することになるとは思っていなかった」という松田氏。
「前職ではIPOの準備など、いわゆる『守備型』の仕事に従事し、IPO後に組織開発を担当した」
包括的な経営の勉強をしようと中小企業診断士の勉強を始めたころに出会ったのが、イノベーションマネジメント研究科の専攻副主任を務める三谷宏治氏の記した『経営戦略全史』だった。
「この本を読んだことが、自分がビジネスで成果を出しているか、成長をしているかと改めて問う契機になった。三谷教授に師事したいと考えて、三谷ゼミのあるK.I.T.虎ノ門大学院に入学を決めた」のだという。
「前職で働いているうちに、ベンチャーのタイプによって成長の仕方が違うのはなぜかという問いが出てきて、大学院での学びを通じてその答えを見つけたかったという理由もある」と語る。「2年間のゼミではずっとその答えを探っていた」という。

 

ゼミでの学びを経てたどり着いた場所

 在学中は、土曜日のゼミに向けた準備で毎週金曜の夜は眠れないというハードな学生生活だったが、「何よりもハードで、何よりも価値があると思えたのが、ゼミでの学び」だったという。

三谷ゼミでは、研究課題のテーマ設定も自由。自由さゆえに大変だったと松田氏は振り返る。仮説を立てて試すという試行錯誤を何度も繰り返すうちに、「試行錯誤型組織への変革活動の実証的研究」というテーマにたどり着いた。

「今まで管理部門で働いていて、ルールに基づいて正しくこなすことが大事というマインドセットだった。それが、ゼミを通じて、正解のない世界で未来を作っていくという考え方に変化してきた」という。

1年次は授業とゼミで幅広い領域を学び、授業は組織や人事マネジメントの分野を軸に、戦略系講義も取った。現在の会社で担当している組織変革についても学び、「一流の講師陣から、組織に関することは一通り学んだ」と語る。
2年次にはゼミの研究に注力。入学時に感じていた「企業の成長の違い」に関する問いかけを突き詰めて考えるうちに、組織文化やリーダーシップ、マルチプルインテリジェンス理論などを組み込んだ自分なりの答えに行き着いた。
「最終的に、論文を提出したことで2年間の学びがすべてつながった」という。

 

転機を経て「道の設計図」を作る

 ちょうど論文の一次提出のタイミングで、今勤めている会社に出会った。
「入学当初は前職をやめるつもりはなかったのだが、大学院で学んでいるうちに、チャレンジをしたい、人事や組織を変革するもう一段階踏み込んだ役割を担いたい、と考えるようになった」
「今勤める会社の代表と話した戦略と組織のつながり、人事や組織に関する理念に共感したことで、転職を決めた」という。

「K.I.T.虎ノ門大学院に通ったことで考え方は根本から変わった」と話す松田氏。
「仕事のクオリティも上がった。今までは、ルールに基づき正しく業務を行うことが管理部門の仕事だと思っていたが、今はそれだけではないと分かった。仮説→実行→検証→改善といったPDCAサイクルの本質を理解して使えるようになったし、目指すイノベーションについてのイメージも固まってきた」

「やっと進む道の設計図ができてきた」という松田氏。考える時間軸も広がったし、組織戦略の可能性も感じているという。
「組織変革は一人ではできない。飛び道具的なやり方がない中で、描いた戦略をどれだけ愚直にやり遂げるか。それが将来のイノベーションにつながれば良いと思っている」と、得た学びを還元しながら、力強く組織改革を進めていく。

 

<取材後記>

 松田氏は、「悩むのは、よく分からないから悩むからで、動かないことには物事は変わっていかない。何のために動くのかを考えるのも必要だが、何でもいいから動いてみるのもいいかもしれない」と話す。
社会人大学院への入学動機は実に様々だ。師事したい先生のゼミを理由にK.I.T.虎ノ門大学院に入学を決めた松田氏は、ゼミでの学びを通じて自身の投げかけた問いに対する答えを見つけ、次のキャリアにつなげている。それを偶然というのか必然というのか。きっかけはどこに潜んでいるか分からない。
 


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