2019年度予算が成立し、10月から消費税が10%に増税されることが決まったが、これについての意見はわかれている。「赤字財政を脱却するために増税はやむをえない」というのが経済学者の主流派だが、最近は世界的な潮流が変わってきた。ゼロ金利が続く中で、金利上昇や財政破綻を恐れる必要があるのかという疑問が広がっているのだ。
これは世界経済の現状をどう見るかという問題とも関わる。世界経済が回復している中で、金利も物価も上がらないのはなぜだろうか。この状況は今後も長期的に続くのだろうか。いま多くのエコノミストがこの問題を論じているが、まだ結論は出ていない。
赤字財政はネズミ講ではない
赤字財政は「ネズミ講」だといわれることがある。確かに新規加入者の出資金を既存加入者への配当に回すという意味では、財政はネズミ講である。日本の1100兆円の政府債務が維持できるのは、それを償還する財源を調達するために国債を発行して借り換えているからだ。
このように借金を返すために借金すると、金利が雪ダルマ式にふくらんで破産する。今でもそういうイメージで、「サラ金財政」などと呼ぶ人がいるが、今の長期金利はほぼゼロ。物価上昇率を引いた実質金利はマイナスである。つまり政府が金を借りると金利をもらえるので、儲かるのだ。
この状況がもし永遠に続くとすると、政府は国債を償還しないで、借り換えを続けることができるので、増税は必要ない。政府には税と国債という2つの財源ができるのだ。全額返済を求められたら増税すればいい。つまり国家の徴税能力が担保になっている点で、赤字財政はネズミ講とは違うのだ。
問題は財政負担が雪ダルマ式に増えるかどうかだ。日本のここ30年の状況をみると、図1のように1990年代から長期金利が名目成長率より高かったので政府債務のGDP比は増えたが、2013年からはこれが逆転し、政府債務比率は下がった。
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この状態が今後も続くとすると、政府債務が無限大に発散するという意味での財政破綻は起こりえないが、これはいつまで続くだろうか。