「華々しく復活せよ日本企業」の企業ケース第1回は、真空技術を核に最先端の技術を生かした、太陽電池向けの製造装置の開発・製造で知られるアルバック。技術力を売り物にする同社のユニークさは、失敗を責めずに、成功するまでやり抜く指導にある。

 長期視点で従業員のアイデアを温めるからこそ、失敗が失敗に終わらない。

選択と集中をしない会社

 アルバックは、1952年に若い研究者たちが故・松下幸之助氏ら6人のポケットマネーの支援を受けて立ち上げた会社で、いわばベンチャー企業のはしりである。

 当時は日本の戦後復興がようやく本格化しようという時期で、真空技術が事業になるとは誰も思っていなかった。そんな時代に、日本に真空技術を根付かせ、産業に貢献しようと考えたことは、研究者、投資家双方に先見の明があったと言えるだろう。

 日本真空技術株式会社という社名で真空ポンプの輸入販売からスタートした同社は、1970年代の電卓の液晶、1980年代のビデオテープ、1990年代の薄型ディスプレイなど時代を代表する様々な製品の製造工程に、先端技術を生かして貢献してきた。

 2001年にはアルティメイト・イン・バキューム(真空の極限に挑戦)からなる造語・アルバック(ULVAC)に社名を変更し、2004年に東証1部に上場した。

 そして2009年6月期の連結売上高は2238億円で、現在は、太陽電池の製造装置など再生可能なエネルギー関連の開発を事業の柱としている。

米GEは選択と集中を徹底させたモデル

 薄膜型太陽電池の事業は、太陽電池そのものを製造するのではなく、それを作るメーカーに製造装置を提供するものである。太陽電池に限らず、各種の製造装置や、その前段階の実験装置、研究装置を開発・製造・販売し、事業範囲は多岐にわたる。

 肥大化した組織をスリムで収益性の高い組織に変えた米国のゼネラル・エレクトリック(GE)の成功例を挙げるまでもなく、ヒト、カネといった事業の「選択と集中」は現代の経営の基本である。

 しかし、アルバックの場合は選択と集中をしないことで成功している。

 同社の事業は装置を扱う以上、将来成長する産業がターゲットとなる。この先、成長する国はどこか、成長する地域はどこか、成長する企業は・・・。