経済産業省は1月9日、再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度(FIT)にもとづく事業用太陽光発電の買い取り価格(500kW未満)を、2019年度は14円/kWhとする方針を決めた。FITが始まった2012年の40円から、7年で65%も下がる。

 日本は世界から周回遅れでFITに加わり、非常識な買い取り価格をつけたため、混乱が続いてきた。経産省も昨年(2018年)まではそれを座視してきたが、ようやく方向転換した。その背景には、エネルギーをめぐる状況の変化がある。

バブルで積み上がった「未稼働案件」

 日本で固定価格の全量買い取り制度が始まったのは、民主党政権のときだ。政権運営に失敗して「反原発」しか売り物のなくなった菅直人首相が「自然エネルギー」を売り物にしたのだ。このように政治的な動機で始まったことが、日本のFITの不幸だった。

 特に太陽光が注目を集め、買い取り価格が40円/kWh(事業用)に決まった。当時、世界的には太陽電池の価格は20円以下に下がっていたが、その2倍以上の買い取り価格をつけ、20年間その価格で電力会社に全量買い取りを義務づけたのだ。

 世界の2倍以上の価格で20年間、政府が利益を保証するのだから、リスクなしで儲かる。おかげで太陽光発電への参入は爆発的に増え、設備認定容量は、FIT開始前の2060万kWから、2018年度には8524万kWになった。

 しかしこの制度はドタバタで決められたため、多くの欠陥があった。特に問題なのは、電力の買い取り価格が設備認定の時点で決まることになっており、いつまでに操業開始するかについて明確な定めがなかったことだ。

 このため価格の高いとき駆け込み的に認定だけ取り、太陽光パネルの価格が下がってから建設しようとする業者が大量に出てきた。さらに用地買収して認定だけとって権利を転売するブローカーも出てきて、「太陽光バブル」が出現した。

 このような「未稼働案件」が、設備認定容量の51%を占める。特に2012~14年度の買い取り価格は40~32円と高かったので、これが今後、稼働すると高価格で買い取らなければならない。そこで経産省もバブルの後始末に乗り出したのだ。