八百長問題に「国技」大相撲が揺れている。その気配を感じながらも暗黙の了解の下、相撲を楽しんできたファンも少なくないと思うが、ここまではっきりと八百長の存在を明かされてしまうと、これから先、相撲を見る目は変わらざるを得ないだろう。

台本のある「演技」か台本なき「競技」か

大相撲春場所中止へ、八百長問題で

相撲は「演技」だったのか〔AFPBB News

 力士は英語で「Sumo wrestler」と訳される。相撲もプロレスのようにしてしまえばいい、という極論も聞こえてくる。

 プロレスと言えば、日本ではその始まりから、真剣勝負なのかそれとも台本に基づくショーなのか、ということが繰り返し議論されいまだうやむやな部分もある。

 一方で、日本でも人気が高い米国のプロレス団体WWEでは、はっきりと試合台本の存在を公言している。

 だからと言って魅力が薄れるわけではなく、勝敗をも含めた規制の中、結末までを並外れて強靱な肉体を存分に使い真剣なプロの闘いを演じて見せるので、それで何の問題もないという自信の表れでもある。

 そんな世界でドサ回りの日々を送っている『レスラー』(2009)の中年プロレスラーの姿を見れば、米国プロレス界の仕組みも分かってくるが、主人公は長年使ってきたステロイドのため体はボロボロという設定。

ステロイド使用を暴露したホセ・カンセコ

 こんなことは、米国プロレス界では別段珍しくもないことで、世間から非難を浴びることもあまりない。しかし、それが野球界となると話は違ってくる。

 2005年、「禁断の肉体改造(Juiced)」なる告白本の中で、名スラッガー、ホセ・カンセコが自らのステロイド使用のみならず多くの使用者の実名を暴露したため、大騒ぎになってしまったのである。

 今年、松井秀喜外野手が加入することになったオークランド・アスレチックスで、かつてマーク・マグワイヤ内野手との長距離砲コンビを組み黄金時代を築いたカンセコ。

 そんな彼らの出場する試合を観戦したことがある。その印象はと言えば、とにかくごついプロレスラーのような肉体とスイング音の物凄さ。