北海道の地震では、全道が大停電する前代未聞の事態になった。事故を起こした苫東厚真(とまとうあつま)石炭火力発電所(165万kW)は今も運転できず、「節電要請」が続いている。その原因について北海道電力の電源配置が「一極集中だった」という批判が多いが、これは結果論である。
苫東厚真は震度7の地震の震源の真上にあった。地震の起こった9月6日午前3時の北海道全体の消費電力は310万kW。その半分以上を苫東厚真が供給していたが、震源から約100km離れた泊原発(207万kW)が稼働していたら、苫東厚真の停電はカバーできただろう。このように原発が止まったままの「片肺飛行」は全国で続いている。
北海道は「片肺」で冬を越せるのか
午前3時8分に地震が起こったとき、苫東厚真2号機と4号機は緊急停止したが、1号機は動いていた。北海道全体が大停電になったのは、1号機が停止した3時25分だ。この17分間に何が起こったのかは、これから詳しい調査が行われるだろうが、今のところ分かっているのは、それまでは他の発電所も動いていたということだ。
一部の発電所が止まっても、ただちに大停電になるわけではない。供給力が落ちると、負荷(電力需要)を自動的に遮断し、需給のバランスを取る。北電は「130万kWの負荷遮断までは想定していた」という。つまり電力供給が180万kWまで落ちてもバランスはとれたはずだ。
しかし3時25分に苫東厚真1号機が落ち、電力供給が消費を下回ったため周波数が低下し、これによって他の発電所も切り離され、それによってさらに送電網の周波数が低下する・・・という連鎖反応が起こった。1号機が落ちたあと、大停電になったのは一瞬だった。
大停電のときは電気が少しずつ止まるのではなく、ブレーカーが落ちるように一挙に大停電が起こる。送電する周波数が大きく低下すると電気機器が壊れるので、発電機が送電網から自動的に切り離されるからだ。