日本銀行は7月末の金融政策決定会合でインフレ目標を下方修正し、長期金利の上昇を容認して量的緩和の「出口戦略」を示唆する一方、当面は現在の超低金利を維持する「フォワード・ガイダンス」を打ち出した。
これをどう解釈するかはマーケットの意見がわかれているが、2013年4月から始まった黒田総裁による「量的・質的緩和」の敗北宣言とみることもできよう。問題は「アベノミクス後」の日本経済に何が起こるかだ。
イールドカーブはコントロールできない
2016年から始まった「イールドカーブ・コントロール」で、日銀は長短金利をコントロールする方針を打ち出した。普通の金融政策では短期金利(政策金利)をコントロールするが、長期金利まで中央銀行がコントロールするのは異例である。今回の措置は、それを緩和して「出口」を探ったものだろう。
今すぐ金融危機が来ることはない。長期金利が0.2%まで上がったとしても超低金利であり、日銀が徹底的に買い支えればいい。しかし国債市場の中で日銀の存在が大きくなりすぎ、地方銀行の経営が悪化している状態はいつまでも続けられない。他方で、いくらマイナス金利を維持しても、インフレ目標には遠く及ばない。
インフレ目標を実現するために超低金利にするという政策には矛盾があった。ゼロ金利からさらに金利を下げるには、インフレで実質金利(名目金利-予想物価上昇率)を下げるしかないが、そのインフレを実現するためには金利を下げないといけない――という循環論法になってしまうのだ。
長期金利をコントロールできるというのは錯覚だ。日銀が無理に相場を支えると、変化のマグマが貯まって、投機筋が売り崩すチャンスになる。そのうち相場が暴落すると、日銀にも市中銀行にも評価損が出る。日銀が債務超過になっても時価評価しなくていいが、民間で取り付けが起こるおそれがある。