そして、そのうちの3カ所にはあらゆる軍用機と大型旅客機などの発着が可能な3000メートル級滑走路まで完備させている。台湾、フィリピン、ベトナム、マレーシアは依然として飛行場を維持しているものの、軍事的には完全に中国に圧倒されてしまっている状況だ。

 だが、南沙諸島の多数の島嶼環礁の中で、台湾が実効支配している唯一の陸地がある。台湾が滑走路を設置している拠点、太平島だ(下の図)。

中国の人工島基地に取り囲まれている太平島
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 この島には台湾海軍陸戦隊と台湾沿岸警備隊が常駐しているが、太平島そのものが軍事機密となっており、詳細情報は明かされていない。

 2007年には1200メートル滑走路を有する太平島空港が完成し、台湾軍輸送機(C-130ハーキュリーズ)が台湾本島との交通手段となっている。ただし、滑走路が短距離であるため、戦闘機の発着はできない。また2016年には3000トン級の沿岸警備隊巡視船が着岸できる埠頭が完成した。沿岸警備隊船艇以外にも、20日ごとに民間商船が生活用品を供給するために太平島に寄港している。

 台湾は太平島に軍事拠点として使用可能な施設を設置して実効支配を続けているが、中国の南沙諸島軍事支配の勢いに押されて、太平島は厳しい軍事環境に直面している。太平島からわずか70キロメートル北北西にはスービ礁があり、中国は人工島化して3000メートル滑走路や港湾施設を設置している。また太平島の135キロメートル東南東にはミスチーフ礁があり、やはり中国が人工島化して2644メートル滑走路や港湾施設をはじめとする軍事設備を設置している。そして太平島の185キロメートル西南西にはファイアリークロス礁が位置しており、この環礁も3125メートル滑走路や港湾設備が完備する中国人工島軍事施設と化してしまっている。

 このように、台湾が実効支配を続けている太平島の周辺には、中国軍の戦闘機や攻撃機それに爆撃機も発着可能な空港や駆逐艦やフリゲートが着岸できる港湾施設を擁した人工島が誕生し、太平島はいつでも中国の軍事攻撃の餌食になってしまう状況に晒されている。