日本の課題を多面的に取り上げたエコノミスト・カンファレンス「ジャパン・サミット2010――日本における世代シフト、新たな時代のリーダーと変革のビジョン」のダイジェスト第5回は「“人財”戦略:グローバル“人財”の発掘と活用」。
パネリストは東京大学社会科学研究所教授の玄田有史氏、産業革新機構執行役員の西口尚宏氏、伊藤忠商事コーポレートカウンセルの茅野みつる氏、ブリティツシュ・アメリカンタバコ・ジャパン社長のナレッシュ・セティ氏、ブリティッシュ・カウンシル駐日代表のジェイスン・ジェイムズ氏、グロービス経営大学院学長の堀義人氏。このカンファレンスに先立って行われたエッセイコンテストに入賞した東大大学院の水沼未雅さんも会場から議論に加わった。司会はエコノミスト誌東京支局長のヘンリー・トリックス氏。
若者が「内向き」なのは、お金がないから
トリックス 若い人たちがどう感じているのか、何を考えているのかを知るために、この会合に先駆けて、学生を対象としたエッセイコンテストを実施しました。33人から応募があり、東大大学院薬学系研究科の水沼美雅さんと、立教大学経営学部のサミ・ハンダニさんが入賞しました。
水沼さんは「資源小国の日本が、教育や研究開発への支出を減らすことは間違っている」と指摘しています。ハンダニさんは「日本は失敗することに対してネガティブな見方があり、リスクを回避する傾向が強い。起業家精神を高めるためにも、リスク許容度を高めることが必要」と言っています。
2人の意見をたたき台として今日の議論を進めていきたいと思います。まずは、日本の若者の現状についてお話しください。
玄田 日本の若者を象徴するのに「内向き」という言葉が使われます。地元志向が強くて都会に出る気がなく、海外旅行にも行かない。その最大の理由は「お金がない」からです。
今後の日本を考える時に、高齢者に偏在しているお金をどうやって若者に回していくかが重要な課題になると思います。高齢者がお金を使うことで安心を買うことができる、という仕組みを日本に作っていかなければなりません。
逆に、そういう新しい仕組みを作ることができず、若者を犠牲にする社会が定着すれば、日本の若者は雪崩をうって海外に出ていってしまうかもしれません。
約20年前は「高学歴・高所得・高身長」の「3高」が女性にモテる条件でした。ところが、今は「低姿勢・低依存・低リスク」の3低男がモテるそうです。
「3低」の方がいいとは言い切れませんが、尊重や独立を尊ぶ傾向が強まっているのだとすれば「3低」は社会が成熟した証しかもしれません。ただ、若者が低リスク志向であるのは気がかりです。
1983年に700万人だった自営業者は、2000年に600万人を切り、2009年に500万人を切りました。「自分で自分のボスになりたい」「自分でビジネスを始めたい」という人が圧倒的に減り、リスクを回避する傾向が強まっているのは大きな問題だと思います。