自動運転技術を巡る競争激化を象徴するニュースが飛び込んできました。
アップルで自動運転プロジェクトに関わっていた元社員が、アップルの技術データを不正に持ち出し、出国直前に逮捕されたというニュースです。この元社員、中国の自動運転のスタートアップ企業に転職することになっていたといいますから、FBIによる逮捕がもう少し遅れていたら、アップルの技術情報が中国企業に流出していたことは想像に難くありません。
こうした違法な技術情報の奪取が企図されるほど、自動運転技術における競争は過熱化しているのです。
そこでわれわれが気になるのは、「日本の企業は自動運転の世界をリードできるのか」ではないでしょうか。従来の自動車メーカーだけではなく、米テスラのような電気自動車(EV)に特化したニューカマーもいれば、グーグルやアップル、アマゾンなどのメガテック企業など異業種からの参入組もいるのが完全自動運転の世界です。
日本の産業界をけん引してきた自動車メーカーがその中で埋もれてしまうようでは、日本経済の未来も一気に視界不良に陥ってしまいます。
自動運転の世界で、日本の自動車メーカーはどこまで来ているのか。まずはトヨタ自動車の動きから解説してみましょう。
EVシフトにトヨタは出遅れたのか?
1997年に世界初の量産型ハイブリッド車「プリウス」を市場に投入したトヨタは、「エコカー」の先駆者でした。プリウスは世界中から高い評価を受け、環境に対する意識が高いハリウッドスターなどもこぞって愛用しました。
ところがトヨタが好調なハイブリッド(HV)や、その後発売した燃料電池車(FCV)、プラグイン・ハイブリッド車(PHV)に注力している間に、世界には急激な電気自動車(EV)化の波が押し寄せていました。「世界のEVシフトにトヨタは出遅れた」。そんな見方が定着していました。