中国の胡錦濤国家主席が米国を公式訪問した。首都ワシントンではそれに伴い、中国や米中関係を巡る論議が熱く燃え上がった。

 ワシントンではもともと中国について熱心に論議されてきたが、その熱気が胡主席の来訪でさらに広がり、高まった。議会や民間研究所で米中関係についての討論が、連日のように催された。

 しかし、米中関係の新たなうねりの中で特に注目されたのは、オバマ政権が「G2」を否定したことだった。

 これは、「中国を、今後の国際関係の中で、最大かつ特別で対等なパートナーとして位置づけることはない」という方針の宣言でもあった。

「米中が世界を仕切る」というG2論

 G2とは、「米中二極体制」という意味だと言える。米国と中国の2国が、全世界で最重要な大国として、対等の立場で協力し、国際的な主要課題に取り組むという発想である。つまり、米中両国が一緒になって世界を仕切るという案がG2論なのである。

 最初に、オバマ政権はG2論を政策として採用すべきだと正面から提唱したのは、かつて民主党カーター政権で国家安全保障担当の大統領補佐官を務めたズビグニュー・ブレジンスキー氏だった。

 同氏はオバマ氏の大統領就任直前の2009年1月中旬に、以下のような趣旨の論文を発表した。

 「米中両国は相互依存の重要性に鑑みて、包括的なパートナーシップに基づくG2の特別な関係を築くべきである。米中両国は経済問題を超えて、中東紛争から核兵器削減、テロリズム対策、気候変動などの国際重要課題の解決に共同で取り組む必要がある」

 つまりは米中二極体制の提唱だった。

 ブレジンスキー氏に続いて、2009年3月にはブッシュ前政権の高官で世界銀行総裁となったロバート・ゼーリック氏が「不況回復はG2に支えられる」という題の論文を発表し、「世界の経済問題の解決には米中両国の先導的な協力こそが不可欠であり、強力なG2なしにはG20も失望に終わるだろう」と主張した。

 この時点では、G2論はオバマ政権の対中政策の大枠を反映しているかにさえ見えた。

 オバマ大統領は2009年4月のロンドンでの米中首脳会談で、米中関係の「引き上げと強化」を唱え、閣僚同士の対話の拡大を打ち出したのだ。そこには米中両国だけが世界最大の2極として国際的な課題や秩序を仕切っていこうとする姿勢までがうかがわれた。