出演:村上輝康(産業戦略研究所 代表)
この動画は知的教養メディア「テンミニッツテレビ・オピニオン」で収録した講義映像:サービソロジーと経営(2)経済はサービスで動いているからお送りしています。
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変化する産業構造を見れば、産業自身が環境に合わせた明快な戦略を持つ生きものに見えてくると、産業戦略研究所代表の村上輝康氏は言う。農業が経済の2割を占めていた1955年から70年代まで「奇跡の経済成長」で主役に躍り出たのは製造業。破竹の勢いで成長した第二次産業の姿を受けて、「モノづくり立国」の産業価値観は形成されていったようだ。
1980年代に入って厳しい国際競争に直面する製造業に代わり、サービス産業はじわじわと拡大を続けた。2014年時点で日本経済の約4分の3をサービス産業が占めるという状況になっている。サービス中心の経済構造へのシフトは世界的にも明らかで、途上国も入れた世界全体で見ても、第三次産業は約64.4パーセントを占めている。世界的にも、経済がサービスを軸に動き始めているのだ。
しかし経済の主流でありながら、日本のサービス産業は生産性が低いという基本的な問題を抱えている。高い生産性を持つ分野はわずかで、大半のサービス産業は製造業より低い生産性に甘んじている。このことが21世紀以降の一人当たりGDPに影響し、日本経済全体の生産性を低下させている、と村上氏は分析する。
日本のサービス産業が、製造業と比べても、また国際的に比較しても生産性で劣るのはなぜなのか。それを知るには、グッズドミナント・ロジック(GDL)とサービスドミナント・ロジック(SDL)を比較してみるといい。モノづくりの論理であるGDLでは、提供者である企業がモノという形で価値の生産を行う。顧客は市場原理に従って購入するか否かを決めるだけだ。一方、SDLでは、価値は顧客と企業の間の「価値共創」によって生まれる。モノの提供者である企業は価値を生産するのでなく、価値を提案し、顧客と価値を共創する。1970年代の製造業はGDLの権化だったが、サービス産業が拡張する中、その経営はSDLによって行われてきたといえるだろうか。
2000年代のIT産業をつぶさに見てきた村上氏は、その時代の日米比較が、自分の経験から、この問題を考える参考になるという。この時期、多機能ケータイを生んだ日本企業は絶好調で、さらなるモノの価値を付加しようと、より多機能・高性能の「ガラパゴス」ケータイに向かう。一方、アメリカ西海岸では一見地味ながら、多彩なイノベーションが起こった。iPod、iPhone、Kindle、iPadなど、その価値を消費者に示すのではなく、顧客が求めるものを探りながら価値共創を実現していくタイプの商品の誕生である。
GDLとSDLの違いはこれからのサービス産業を考える上で大いに参考になる、と村上氏はいう。両者の国際市場における優劣を分けたことを慨嘆したり反省するだけでなく、それらの経験を踏まえてどう前進するかを考える必要がある。サービス産業の生産性を高くすることで日本経済がマクロ・レベルで変貌することは、すでに明らかだ。そのためにサービソロジーが働くわけだが、問題は人材育成費や研究開発費という資源配分にある。そして、資源配分是正の切り札は、サービソロジーにあるのだ。
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1話目および3話目以降は「10MTVオピニオン」でご覧ください。
サービソロジーと経営(2)
経済はサービスで動いている
村上輝康(産業戦略研究所 代表)
2017.12.27(水)
10MTVオピニオン
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