日本で最も豊かな農家の人たちが住む村と言ってもいい北海道更別村。農地の規模化が進み、1戸あたりの平均耕作面積は43.5ヘクタールと、日本の平均的農家の18倍もある。
しかも大規模化はまだ進化の途中で最終的には1戸当たり約90ヘクタールと現在の2倍に達するとみられている。
高級外車に乗り、11月から3月の農閑期には海外へ研修に出かける。日本の農家の憧れと言ってもいいこの村で、静かな改革が始まった。大規模化だけでは農業の自由化時代に生き残れないとの危機感からだ。
よそ者が仕かけ人
仕かけ人はよそ者だった。
亀井秀樹さん。父親の仕事の関係でオーストラリア・エアーズロックの南、アデレードという町で育ち16歳まで過ごした。
オーストラリアで中等学校を卒業したのち日本に帰国して青山学院大学を卒業、いくつかの会社を経て国が地方創生の柱の1つに据える地域おこし協力隊に参加して2014年、更別村にやって来た。
オーストラリアの豊かな自然の中で青少年期を過ごしてきた亀井さんが、更別村に惚れ込むのに時間はかからなかった。しかし、地域おこし協力隊の任期は最大3年。亀井さんにとってはあっと言う間だった。
更別村に残って村のためにもっと貢献したい――。亀井さんは任期が切れる前に何とか村に残れないか、知恵を絞りアンテナを張り巡らした。
そこで出会ったのが「熱中小学校」というプロジェクトだった。