中国の家電量販店に入ってみると、売り場の主役となっているのは、韓国メーカーの製品である。1990年代半ばまでは日本メーカーの製品が主役だったが、今やまったく異なる様相を見せている。

 今回は、中国市場の特質や、中国に進出した日系企業の問題点などを通して、なぜ日本企業が韓国企業に負けたのかを改めて考えてみたい。

 大方の見方は、韓国企業は日本企業よりも安い製品を作り提供しているから、というものだ。日本企業が韓国企業との価格競争に負けたというのである。

 しかし、日本企業が韓国企業と価格競争をしようとすると、ほとんど勝ち目がない。日本企業が韓国企業の製品と同じ価格帯で自社製品を売るならば、日本企業の多くは間違いなく赤字に転落する。

 赤字経営を回避することもできるが、韓国企業の製品と同じスペック(仕様)にする必要がある。だが、そうなれば日本製品の良さはまったく失われてしまうだろう。日本企業は、日本企業ならではの特徴、いわゆる「日本的経営」を生かして勝負すべきである。

現地の従業員が誰も「うちの会社」と言わない

 日本的経営の特徴の1つに、製品の高品質を実現する製造現場のチームワークが挙げられる。

 「現場力」とも呼ばれるほど、マネジャー、技術者と労働者からなるチームワークが強く、労働者が現場で感じた些細なことが合理化提案となり、経営改善に寄与してきた。

 しかし、90年代以降、日本企業の経営は急速に欧米化するようになった。

 例えば、部品調達では「系列」が打破され、海外からの調達率が増えた。部品の品質管理はルーズになり、めったに壊れないはずの日本製品も故障率が上がっている。

 また、アジアに進出している日系企業では、生産現場からの合理化提案がほとんど行われていない。それは、現地工場が本社のアジア分工場のような存在になっているからだ。

 日本のサラリーマンの口癖に、「うちの会社」という言い方があるが、アジアに進出している日系企業の従業員から「うちの会社」という言葉を聞くことはほとんどない。現地の従業員は企業の一員になっておらず、一時的に身を寄せているだけである。

 日本経済の「失われた20年」はいまだ続いており、日本企業は前向きな気持ちを失っている。経営者の中には、コスト削減を至上命題として考える者が少なくない。その結果、海外に進出している日系企業もコスト削減に励み、少しでも安い製品を作るために、人件費を必要以上に抑制している。