現在の中国の軍備について米国が最も関心を寄せているのは、対艦弾道ミサイルの開発だろう。

 中国は「東風21」をベースに、衛星情報をもとに軌道を修正し、米海軍の空母を攻撃する能力を保持する通常弾頭型の「東風21D」の開発を進めている。これを米国は、中国の「接近阻止」(Anti-Access)戦略の主要手段として見ている。

 中国は1996年3月の台湾総統選挙に際し、弾道ミサイル演習で台湾を威嚇した。それに対して米国は2個空母戦闘群を台湾近海に展開して中国に圧力をかけた。

 この前例を念頭に置けば、台湾に対して中国が軍事行動を起こそうとする場合、中国は米国の介入が当然あり得ると考えるだろう。

 米国の軍事プレゼンスを示す最も効果的な手段が空母の派遣であるとするなら、その空母を攻撃し得る能力を持つことで介入阻止を図るのは、中国としては当然の選択ということになる。

弾道ミサイルが米空母を台湾から引き離す

 「接近阻止」の能力は、例えば潜水艦や巡航ミサイルでも担うことができる。実際、中国はそのためにディーゼル潜水艦の近代化と増強に努めてきたし、対艦ミサイルも開発、増強してきた。

 しかし、それらに対して、米軍にはある程度効果の期待できる対処法がある。潜水艦には潜水艦で対抗できるし、米海軍の対潜哨戒能力は高い。巡航ミサイルに対しては、空母を護衛するイージス艦の防空システムで対応が可能だからだ。

 しかし、弾道ミサイルで攻撃してくるとなると、厄介なことになる。

 ミサイル防衛システムとして準中距離ミサイルまで対応が可能なスタンダードミサイル「SM-3ブロックIA」を搭載したイージス駆逐艦が近くで護衛に当たっていれば、対処し得るだろう。

 だが、海上を移動する空母に合わせて軌道を修正しながら接近してくる弾道ミサイルに対して、現有のミサイル防衛システムがどの程度有効なのかは分からないからだ。