「加藤さん、菅直人政権は日本の駐ロシア大使を一時召還しましたね。びっくりしましたよ。日本政府は領土問題で窮地に陥っている。このままでは国内の権力基盤だけじゃなくて、国際社会における日本のイメージも悪い方向に向かっていかざるを得ないでしょ」

 「日本人として貴国を取り巻く昨今の情勢をどう見ていますか?」

世界中の記者から寄せられた同情

メドベージェフ露大統領、国後島を訪問

ロシアの元首として初めて北方領土に足を踏み入れたドミトリー・メドベージェフ大統領(国後島で)〔AFPBB News

 11月2日、中国だけでなく、米国、韓国、英国、フランスなど各国の北京駐在記者から同じような電話がかかってきた。共通していたのは、内容だけではない。筆者を考え込ませたのはその「同情的」とも言える口調であった。

 何はともあれ、外国のジャーナリストたちが日本の動向に注目してくれているのは、ありがたいことだ。自らをそう慰めるしか手立てはなかった。

 11月3日、広東省に出張していた筆者は、現地の中学生と交流する機会を得た。政治に話が及ぶ。中国の小中高生は、地域や学力を問わず、国際関係に大きな興味を抱く。国家の経済発展に勢いがあり、それを肌身で感じるからだろうか。

 自国民が海外の人たちからどう思われているか、という「私の国際関係」に、極度にセンセーショナルになっているからだろうか。

 講演が終わり、荷物を整理し終えた。食事の会場に向かおうかというまさにその時、見るからにシャイで、交流会でもおとなしくしていたひ弱な女の子が単刀直入に聞いてきた。

12歳の少女に本質を突かれ逃げ出したくなった

 「加藤先生、日本の政治家は主権とか領土とかあまり気にしないんですか? 日本は海洋国家ですよね?」

 「政治家がリーダーシップを取って、国民の主権・領土に対する意識を高めること。安全保障って、そこから始まるんじゃないんですか? 日本の政治家が日頃何に忙しくしているか興味あります。教えていただけませんか?」

 言葉も出なかった。地方の一中学生にここまで本質を突かれるとは、思ってもみなかった。年齢をこっそり聞いた。12歳だった。今年26歳になる筆者は、恥ずかしくなり、その場を逃げ出したくなった。

 11月1日、ドミトリー・メドベージェフ大統領がロシアの国家元首として初めて北方領土の国後島を訪問し、視察した。中国漁船との衝突事件に続き、北東アジアにおける領土を巡る紛糾が後を絶たない。