費用対効果は小さいが、不正予防を目的に取り組む中小企業も


 国内でも大企業と中小企業の間に格差が生じています。中小企業の場合、通常業務をまわすのに手いっぱいで、大企業に比べるとトレジャリー・マネジメントにしっかり取り組む余裕がない状況です。

 もっとも、グローバル連結ベースの売上げが2000~3000億円程度ないと、トレジャリー・マネジメントの費用対効果は大きくありません。たとえば、アジア地域に現地法人をいくつかつくったというぐらいの中小企業がTMSを導入し、トレジャリー・マネジメントに取り組んだとしても、費用対効果は得られないでしょう。

 中小企業の一般的状況は図の通りですが、特に地方の中小企業の場合、国内では地方銀行等をメインバンクとしているため、海外進出を機にメガバンクと取引するようになり、進出先でメガバンクの海外支店のエレクトロニックバンキング(EB)を利用するケースが多いようです。中小企業の関心は、主に現地法人の口座をモニタリングしたり、現地の従業員による不正を予防することにあります。

 一方、大企業の間では、トレジャリー・マネジメントに関する問題意識が徐々に高まってきています。ただし、グローバルに事業展開する上場企業でも、海外EBに加えてTMSを利用し、コスト削減を目的にトレジャリー・マネジメントを積極推進する企業は少なく、まだまだ本業重視の姿勢が見受けられます。

図表2:日本における大企業と中小企業のトレジャリー・マネジメントへの取り組みの違い(PwCあらた有限責任監査法人作成)
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 図にまとめた大企業の一般的状況を参考に、自社が後れを取っているのはどこかを見極め、トレジャリー・マネジメントを実行・推進するきっかけとしていただけたら幸いです。

次回(最終回)は、「トレジャリー・マネジメント」に取り組むメリットを紹介するとともに、取り組まないリスクについて掘り下げてまりいます。