奇跡は起こり得るのか、起こるべくして起きたのか不明だが、チリ北部コピアポ近郊のサンホセ鉱山落盤事故で、奇跡の全員生還が起きた。極限状況に直面した場合の危機管理について多くの示唆を与えてくれた。以下それらについて述べたい。

 なお本稿は、10月17日夕までの各種報道を参考に作成したものであり、新たな事実が判明した場合には適宜修正されるべきものであることを予め断っておきたい。

1 チリ鉱山事故の経緯

チリ鉱山事故、落盤発生から救出まで

チリ北部のサンホセ鉱山の地下から救出され、セバスティアン・ピニェラ大統領と抱擁をかわすフローレンシオ・アバロスさん(2010年10月13日)〔AFPBB News

(1)8月5日  落盤事故で作業員33人が地下約700メートルの坑道内に閉じ込められた。

(2)8月22日(18日目) 生存は絶望視されていたが、救助隊は確認のため、地下約700メートルにある避難所まで、直径8センチのドリルで穴を開けた。

 地下から引き揚げた掘削ドリルに挟まれた「33人全員元気」のメモにより作業員の生存確認。

 避難所には、食料や水が備蓄され、通風口がつながっていたため彼らは生存していたが、食いつないだ備蓄食料はあと2日分しかなかった。

 事後、この救命抗を通じて地下・地上間の連絡が行われ、所要の物資などの補給が行われ、細々ながらも彼らは命を長らえ、希望を持つことができたのである。

(3) 8月29日(25日目) 救出用縦杭の掘削開始 2本目:9月5日 3本目:9月19日

(4) 10月9日 2本目の立て抗、作業員の居る坑道到着。

(5) 10月13日(70日目)救出用カプセルによる引き上げで作業員全員帰還。

2 成功の要因(奇跡は起こるべくして起きた!)

2.1 現場監督の秀でたリーダーシップ

 地下700メートル、温度35度、湿度80%の閉鎖空間に閉じ込められた33人の奇跡的な生還は、事故発生時、現場監督だったルイス・ウルスア氏に負うところ大である。

 生存救出も絶望と考えられる極限状況下で、現場監督に率いられ、当初こそ混乱があっただろうが、逐次に組織的かつ沈着に行動し得たことが、全員の生存救出につながったと言っても過言ではなかろう。彼のリーダーシップぶりを各種報道から管見したい。

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